党大会「居眠り江沢民」から読む中国の近未来 元中国大使が断言「習近平の3期目はない」

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大会の会場では、2人の長老を立てて中央に席を用意したが、習近平にとって長老たちは、もはや事前に相談を要する相手でもないし、顔色をうかがうべき相手でもないのだ。長老が影響力を残す時代は終わったのではないだろうか。

中国は現在の指導部が権力を持ち、権力を行使すると、習近平は3時間半という時間をもって、長老および全国の代表者たちへ圧力をかけたのではないだろうか。「もう人事でも遠慮はしませんよ」と、言葉を用いぬ宣言を行ったといえよう。

習近平は3期目を狙っていない

10月24日に閉幕した党大会に続き、翌25日、第19期中央委員会第1回全体会議(1中全会)で、党の最高指導部である政治局常務委員の人事が発表になった。この発表に習近平の後継者と目されていた陳敏爾重慶市党委書記の名前がなかったことで、日本のメディアは「3期目を狙う習近平」という識者の見立てを積極的に取り上げている。

江沢民体制のときには胡錦濤が、胡錦濤体制のときには習近平が、若くして政治局常務委員に登用され後継者としての経験を積んできた。今回の人事では、後継者となる若手の常務委員入りがなかったため、5年後に習近平の跡を継ぐ人間がいない。そのため、次の5年(3期目)も引き続き習近平がトップの座にとどまるのではないかという観測である。

現在64歳の習近平は、2期目を終える5年後には69歳となる。中国では68歳で党指導部を退くというのがこれまでの慣例だ。もし、習近平が3期目も務めるとすれば、この慣例を破り74歳まで中国のトップに居座ることになる。

過去に後継者を常務委員にしていたから、今回もそうなるはずだ。そうならなかったのは別の意図があるからだ。その意図とは習近平の慣例を破る続投である、と識者は考えているのであろう。権力者が少しでも長くその座にとどまろうとするのは、古今東西でよく目にする光景ではある。

だが、日本の株式会社でも過去に松下電器産業(現パナソニック)が3代目山下俊彦社長を「25段飛び」で抜擢したように、序列を飛び越えてトップを選ぶことは珍しくない。後継者は政治局常務委員以外から抜擢されることがないと、どうして言えようか。

むしろ、その可能性のほうが高いというのが、私の考えだ。つまり、習近平体制の3期目はないと見ている。習近平が己の権力欲から長期政権を望んで、後継者を常務委員から排除したという識者の話は、私としては、あまりにステレオタイプで硬直した見立てと思わざるをえない。

習近平の5年間の実績は、軍の改革と反腐敗運動の推進である。軍の改革で最も大きかったのは、2015年11月に行った陸軍中心だった軍制の改革と陸海空軍と並ぶロケット軍の創設、それにサイバー攻撃や宇宙空間の軍事行動を担う戦略支援部隊の創設である。軍の改革、改編とは軍の近代化である。近代化は装備だけでなく、それを運用する人材と組織の近代化を伴う。中国も戦争の形態が変わったことを認識しているのだ。

もはや互いに至近距離で銃を撃ち合う戦争の時代ではない。現代の戦争は、地球の裏側からICBM(大陸間弾道ミサイル)を飛ばし、遠隔操作の兵器によって敵を攻撃し、電磁波等サイバー空間での攻防を繰り広げる。テクノロジーの進歩が、軍の近代化を余儀なくしている。

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