小田急新ダイヤは不動産相場をどう変えるか 実は世田谷区内の利便性がアップ

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夕方ラッシュ時間帯の速達化では、小田原線でも新宿から町田までが快速急行で最速33分となる。しかも18時台から23時台まで1時間4本という頻度(2本が藤沢行、2本が本厚木・伊勢原行)で運行される。

この時間帯に新宿を発車する列車は、快速急行が毎時6本に加えて急行も毎時6本、各停が8本の計20本となる。さらに代々木上原では、千代田線から直通の急行(伊勢原行)が毎時2本、準急が4本、各停(成城学園前行)が2本の計8本が合流し、夕方の下りも利便性が向上する。

このほかにも、特急ロマンスカーの増発や、新宿―小田原間を59分で結ぶ「スーパーはこね号」の登場、始発の繰り上げや終電の繰り下げなど、輸送力の増強が全面的に展開されている。

世田谷のマンション価格は上昇?

興味深いのは、近郊区間に当たる世田谷区内への優遇だ。ラッシュ時上りでは、向ヶ丘遊園駅と成城学園前の始発列車を増便し、計20本運転することで着席の可能性が向上するほか、下りでは千代田線から直通の各停成城学園前行きの設定などがある。北側のバス路線が増えつつある経堂駅では、朝方の通勤準急が停車するようになるなど、1日の停車本数が一気に172本も増加(平日の場合)する。

さらに、土・休日ダイヤでは成城学園前始発の千代田線直通準急が設定され、これまで通過していた狛江、祖師ヶ谷大蔵、千歳船橋に準急が停車するなど、世田谷区内の利用者の利便性にも配慮が払われている。ダイヤ改正前に関係者が「不動産価格に影響を与える」と言った通り、世田谷のマンション価格に上昇傾向の影響が出るかもしれない。

そんなわけで、小田急の2018年3月ダイヤ改正は、全方位にわたって工夫された意欲的な内容であることが判明した。特に、今回の改正で千代田線直通の拡大など輸送力の大幅アップを実現しただけでなく、相鉄の都心直通という数年先の変化を見据えて「先手を打ってきた」というのは意外であった。

もちろん、通勤通学客の流動というのはまさに流動的であり、実施後にさまざまな修正を繰り返していくことになるのだろうが、とりあえずは3月の新ダイヤへのスムーズな移行を期待したい。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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