ツムラが本場・中国で「伝統医薬」に挑むワケ 中国企業と資本提携、現地需要取り込み狙う

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中薬の市場規模は10兆円を超えるといわれているが、輸出用製剤や健康食品が含まれている可能性もあるなど、正確な現地市場規模はわかっていない。それでも国内の漢方薬市場規模1500億円弱と比べれば中薬の市場規模が大きいことは明らか。さらに今後、経済成長に刻み生薬からエキスや顆粒など製剤へのシフトも進むと考えられる。

一方、漢方薬は中国起源であり使われる生薬も中国伝来だが、日本独自の発展を遂げてきた。民間療法と混同されることもあるが、現在では148処方が厚生労働省から承認されている医療用医薬品だ。有効成分を抽出、製剤化したものが普通だが、植物や動物、鉱物といった原料生薬の国内調達率は15%程度で、80%を中国からの輸入に依存している。

原料生薬の調達が中心だった

原料生薬には野生のものや栽培に時間がかかるものもあり、調達は不安定になりがちで調達価格も不安定。それゆえこれまでツムラの中国戦略は、原料生薬の調達が中心だった。

2001年に設立した上海津村製薬は中国で初の製造拠点。日本向けにエキス粉末を作っている(写真:ツムラ)

ツムラと中国の関係は、1978年にさかのぼる。国交回復のわずか6年後に、津村重舎会長(当時)が生薬原料貿易について当局と直接交渉したのが始まりだ。1981年には原料生薬調達の長期契約を締結、その後1994年までに合弁9社、1991年には100%子会社も設立している。2011年には漢方の7割に配合されている重要生薬、甘草の人工栽培技術を北京中医薬大学などと共同開発している。

そうした動きに合わせ、2016年5月には現地の中薬配合用の顆粒製造に向け上海の中薬メーカーと合弁会社、上海上薬津村製薬を設立。中薬事業参入の足掛かりを作った。2021年度の販売開始を目指し現在工場建設、製造品目選定などの準備を進めているところだ。

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