栃木のカメラ屋がなぜか圧倒的高収益のワケ

これから生き残る仕事、失われる仕事は何か

人間が蒸気機関車と競走しても勝てないように、ITやロボットに勝負を挑んでも勝てない。「新しい技術」により「定型業務」が自動化・効率化された時間を、どんな「非定型業務」にフォーカスするべきかがポイントとなる。「非定型業務」の1つである「人とのコミュニケーション」に集中した面白い事例を紹介しよう。

「サトーカメラ」高収益の秘密

家電量販の激戦区・栃木県で圧倒的に強く、県内のカメラ販売シェアでは不動の首位をキープし続けるカメラチェーン店がある。サトーカメラだ。サトーカメラの店内は、いたるところに手書きPOPがあるなど、外見は家電量販店とそれほど変わらない。

他店と異なるのは、店内にソファが並んでおり、カメラの基本操作や写真撮影のノウハウについて客と店員が歓談する姿がよく見られるところにある。写真談義のみならず、いつの間にか作品自慢になり、さらに孫自慢まで、延々と話し合っている。接客に1時間かかるのは当たり前。最長記録はなんと5時間だという。

一見、販売効率は悪そうだが、粗利益率はなんと44%と超高収益だ。サトーカメラが高収益の理由は「対面でのカメラ販売」に特化しているところにある。ターゲットとなる顧客の多くは、それまで写真にあまり興味なかったが、何らかのきっかけで写真に興味を持ってサトーカメラに来店した「カメラ初心者」だ。サトーカメラではそんな「カメラ初心者」の客を見つけ、全力でもてなし雑談しながら、まずはカメラや写真に関心を持ってもらう。客がカメラを購入するころには、サトーカメラのファンになっているのだ。

店のファンになった「カメラ初心者」は、自宅ではなかなかうまく写真を印刷できない。そこで撮った写真を店で印刷する客がたくさんいる。カメラを購入する際に親切にしてくれた店員と、一緒に写真を選び、サトーカメラでプリントするのだ。

実は、サトーカメラの利益の半分は、カメラ販売ではなく、この写真印刷だ。プリンターメーカーは本体を低価格で販売し、利益率の高いインクカートリッジの販売によって収益を得ているといわれるが、サトーカメラのビジネスモデルもそれに近い。だから利益率が高いのだ。

「客と雑談し、写真と店のファンになってもらう」という仕事は、ITやロボットでは効率化できない「非定型業務」だ。サトーカメラでは、社員の接客シミュレーションをビデオに撮影して販売員同士が課題を指摘し合うなどして、社員の接客力向上に力を入れている。つまり、どんな「新しい技術」が登場したとしても、代替することができない「客とのコミュニケーション」に集中しているのだ。

大量に押し寄せる「定型業務」は、そもそも多くの人にとっては苦手な作業であり、ITやロボットのほうが正確だし、迅速だ。だからどんどん「新しい技術」に任せるべきなのだ。そうすれば、私たちは不快でつらく苦手な仕事を減らし、より人間らしい仕事に集中できるようになる。

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