財政悪化が進んでも警鐘の鳴らない国、日本 衆院選で明らかにポピュリズムに陥った

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日本の財政は、国と地方の長期債務を合わせて、2017年度末で1093兆円、対GDP比で198%にのぼる。世界共通の基準による国と地方の一般債務は2015年度実績で1296兆円、対GDP比は243.5%と断トツ。先進国で2位のイタリアは対GDP比で132.7%(2015年暦年)である。

消費税率の8%から10%への引き上げによる税収の当初予定していた使途も借金が減るわけではなく、毎年発生している財政赤字を2兆円減らすだけだ。だから「後代への負担のつけ回しの軽減」にすぎず、「つけ回し」はまだまだ続くのである。ちなみに、2017年度の基礎的財政収支は10.8兆円の赤字の予定で、2020年度の黒字化目標は達成がまったく無理という状況だ。

そんななかでも、ポピュリズム的な増税の回避、バラマキ政策といった無責任な公約がまかり通る。なぜなのか。

こうした問題の背後には、日本の財政がさらに悪化すること、あるいは財政再建への政府の姿勢が後退したことが明らかなのに、市場からの警鐘が鳴らないということがあるだろう。

市場からの警鐘はなぜ鳴らないのか

第1に、財政の体温計とも言うべき「国債の金利」が役に立たないことだ。いうまでもなく、日本銀行の金融政策が原因だ。2%のインフレ率の目標を達成するために、2013年4月以降、年間50兆円、2014年10月以降は年間80兆円も保有量が積みあがるように国債を買って資金供給する異次元緩和を続け、国債市場の流動性は枯渇してしまった。購入できる量の限界が見えてきたので、2016年2月にはマイナス金利政策、9月からはイールドカーブ・コントロール政策を導入して、短期金利をマイナス0.1%に固定、長期金利(期間10年)をゼロ%に誘導している。金利は日銀の管理下にあり、市場原理によって動くものではなくなったため、財政が悪化しても金利の反応は鈍い。

第2に、格付け会社の格付けも日本国債についてはあまり機能しない。日本国債の格付けはS&PでAプラスで見通しは安定的。ムーディーズもA1で見通しは安定的、フィッチ・レーティングスはAで見通しは安定的である。

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