ビームス、「株式上場をしない僕たちの本音」  最先端を走り続けるセレクトショップの流儀

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――さらに会社を大きくするために、株式を上場して資金調達する手段もありました。

短期的な利益ではなく、長期的に見てビームスらしさをいかに表現できるかを考えて経営している。上場したら短期的な利益を株主から求められてしまう。40年以上、量を追いすぎず地道に取り組んできたことが、最先端であり続けられた理由だと思っている。原宿で数万円のシャツを扱う店はゴマンとある。その中でビームスがいい位置を保ち続けているのは奇跡に近い。ビームスらしくあるために上場しなかった。

キュレーション能力で日本の魅力を引き出す

――新宿のビームス ジャパンは日本をテーマにしたお店です。

これまで海外のいいものを日本に紹介してきたが、日本のよさに気づかなかった。これからはメード・イン・ジャパンが国内外でステータスになると考えている。

このことを痛感したのは、英国のロンドンにあるセヴィルロウ(背広の語源になったとされる、スーツ店街)を訪れたときだ。彼らが日本の着物の生地を使ってスーツを作っていた。どうして日本のものづくりのすばらしさに気づいていなかったのか、と考えさせられた。ビームスなりに日本を表現しようと思って2016年4月に開業に至った。

新宿にあるビームス ジャパン店内の9月の様子。金色のキューピー人形は2016年春の開業時話題となった(撮影:今井康一)

ビームスの強みは、商品をセレクトしてお客に伝えるキュレーション(情報を収集し価値を持たせる)能力。今後は、この能力を生かして、さまざまな日本の企業や自治体とのコラボレーションを進めていく。

異業種の企業や自治体が持っている魅力を引き出し、ビームスが選んだ独自商品を生み出す実験を進めている。

――モノを売るセレクトショップからの転換を進めていくのですか。

幸いなことに、今のビームスにはさまざまなブランドや企業などからコラボの依頼がある。セレクトショップというのは、「この指とまれ」とみんなに呼びかけて、どれほど多くの人々を集めることができるかに懸かっている。ただ単にファッションをやる、若者文化を発信し続けるというだけでは飯の種にはならない。ビジネスとのバランスを取りながら進めていく必要がある。40年以上培ってきたノウハウを使って成功事例を生み出していきたい。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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