SL復活「蒸気を使わずに」走らせた秘密とは?

大阪の企業、鉄道マンらの支援で実現

だが、その矢先に悲劇が襲う。2016年10月、恒松さんが交通事故で亡くなったのだ。恒松さんが他の地で手掛けていたSL整備とともに、この計画も暗礁に乗り上げ、一時は計画の断念も考えたという。

SLを運転する若桜鉄道の谷口氏。恒松さんの遺志と技術を受け継ぎ、各地のSL整備に携わっている(筆者撮影)

途方に暮れていたとき、1人の鉄道マンが立ち上がった。同じ空気圧縮式でのSL動態保存を行っている、若桜鉄道の谷口剛史さんだ。若桜鉄道では恒松さんの指導の下、谷口さんらが2007年からSLの整備を開始。2015年4月には本線での走行実証実験も行い、1万3000人もの観光客を集めている。

「私たちも恒松さんに教えていただき、動かすことができた。自分たちがお手伝いすることで、遺志を継いでいきたい」(谷口さん)

谷口さんのほか、国鉄時代からSLの整備に携わっていた関根利夫さんも加わって、プロジェクトは再び始動。この日の試運転にこぎ着けた。

将来は鉄道テーマパークを

圧縮空気によるSL動態保存を成功させたアチハ。前述のとおり、7月下旬から8月まで有田川鉄道公園で試乗や体験運転を行ったが、今後はこのSLを全国に貸し出す事業を計画している。アチハは鉄道車両輸送が本業であり、その過程として線路敷設の実績もあるので、SLの整備や運転とともにパッケージ化した提案ができる。すでにいくつかの自治体などから問い合わせもあるという。

「SLに思い入れのある人は多い。イベント等の目玉として、特に地方の活性化に貢献できると考えている。現状ではまださまざまな課題があるが、ゆくゆくは子どもたちにも自分の手でSLを動かしてもらい、鉄道の楽しさ、自分で動かすことの喜びを感じてもらえるようにしていきたい」(阿知波さん)

アチハがゴールデンウイークに本社敷地で上げているこいのぼり(筆者撮影)

ところで、アチハが「子どもたちの笑顔が見たい」と、30年以上にわたって手掛けている企画がある。大阪市住之江区にある同社の本社敷地で、毎年ゴールデンウイークにクレーンを使ってこいのぼりを上げているのだ。この地域のマンションでは鯉のぼりを上げることができないことを知り、「特大のこいのぼりを上げて、子どもたちに見てほしい」と続けている。

「近くへ見に来てくれた子どもたちが喜んでいる姿を見て、私たちも元気をもらっています」(阿知波さん)

アチハでは、今回復活したD51形に続き、他のSLの復活も模索。将来は、SL以外にもさまざまな車両を集めたテーマパークを作り、来場者が乗車したり運転できるようにしたいと話す。こいのぼりからSL、そして鉄道テーマパークへ。同社の今後に注目が集まる。

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