安倍自民vs小池希望、どこに注目するべきか 社会保障で見えない与野党の違い

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希望の党を中心とした野党連合が過半数を得ない限り、有無を言わさぬ形で「小池首班」となるとは断定できない。もちろん、小池都知事が衆議院選挙に出馬して、初めて成り立つ話ではあるが。

それにしても、安倍一強が盤石だと思われていたのに、どうしてかくも緊迫感のある政権選択選挙の様相に激変したのか。もちろん、希望の党を中心とした野党連合が候補者を1本化し、自公両党に対抗できるようになったからだが、その遠因は、安倍内閣が閉塞感の払拭に奏功していないからだ。

2012年に第2次安倍内閣が成立したときも、民主党政権の悪態に懲りた有権者が、「アベノミクス」が閉塞感を払拭する改革を進めてくれると期待し、自公両党を支持したからだった。2009年に民主党政権が成立したときも、景況や社会経済システムに閉塞感があるにもかかわらず、それまでの自公政権が改革意欲を失って現状維持的になり、民主党の新しい政策が閉塞感を払拭すると期待したからである。

衆議院総選挙は、常に改革内容を与野党で競い合う場になるようには見えないかもしれないが、よくよく見てみると、多くの有権者が改革意欲が高いと認識する側の政党が議席を大きく増やしている。小泉純一郎内閣が長期政権になったのも、常に「抵抗勢力」に立ち向かう改革に取り組んでいるという印象を、有権者に認識させることに成功したことが大きい。改革内容には賛否は分かれるが、小泉内閣といえば、「構造改革」と想起するほどである。

長期政権下で出てきたマンネリ感

安倍内閣については、第2次内閣期では改革意欲は高かったものの、第3次内閣からはやはり長期政権化してマンネリ感が出てしまった。「働き方改革」「生産性革命」「人づくり革命」と、改革に取り組む姿を見せようとはしたが、閉塞感の払拭には結びついていない、と有権者は受け止めているようだ。

小池代表が希望の党を旗揚げする際に、「保守改革政党」と銘打ったのも、国政選挙におけるそういう流れを意識したのだろう。今回の衆議院総選挙が政権選択選挙となるからには、選択の上でどの点が焦点になるか。ここでは「首相の信認」と「統治能力」の2点を挙げたい。

「首相の信認」とは、首相としてのリーダーシップを認め、信用できるか否かだ。安倍一強が揺るぎないと思われていたころは、野党の失策もあるとはいえ、安倍首相が菅義偉官房長官を中心に首相官邸で強い主導権を握り、内閣人事局を設置し政策立案にたけた官僚組織を掌握できる人物と、多くの国民から認められていた。しかし、森友学園問題と加計学園問題が噴出して、贈収賄はなさそうだが、安倍首相が身内に甘い人事や政策形成を行っていると見られてしまった。これは首相の信認に傷をつけることになった。

今回の衆議院総選挙で、非自民・非共産の野党連合は、信認の得られる人物を次の総理大臣に推挙できると有権者から認められるかどうかで、得られる議席にも影響を及ぼすだろう。

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