安倍自民vs小池希望、どこに注目するべきか

社会保障で見えない与野党の違い

次に「統治能力」である。民進党が事実上解党したのは、旧民主党が野に下った後でも、その後継政党として、統治能力に疑義が残ったのも一因だ。旧民主党政権では、「政治主導」を掲げながら、官僚組織にサボタージュを決め込まれた。1993年の非自民連立政権では、政党間の連携で決定的に決裂したことで崩壊した。その点、安倍内閣では、森友・加計問題で疑問符が若干ついたものの、今のところ官僚組織を統制できている。

非自民・非共産の野党連合は、もし政権を奪取したらどう統治能力を発揮できるか、選挙期間という短い時間に、有権者に認められるものを示せなければならない。小池都知事は、東京都庁でリーダーシップを発揮しているといえども、まだ1年余である。また、部局別の採用でない一括採用で、縦割りが中央省庁より少ない都庁でのリーダーシップに過ぎない。

政権選択選挙であるからには、次の総理大臣だけでなく、その政策内容も問われる。しかし、今のところ、政策論争が意義ある形で深まる見通しはあまりない。政党間での駆け引きによって、政策が”抱きつき”か”逆張り”かのどちらかに、堕してしまっているからだ。与党も野党も、他党と同じ政策を掲げて”抱きつき”をするか、他党が掲げた政策と正反対の政策を掲げて”逆張り”をするか。”抱きつき”は争点化したくない政策、”逆張り”は争点化したい政策である。

増税凍結と憲法改正を目指す「希望の党」

「消費税増税を2019年10月に予定通り実施」し、その「増収分の全てを借金返済でなく社会保障費に充当する」と明言したのは、前原代表が率いる民進党だ。が、「消費増税を凍結する」と明言した小池代表が率いる希望の党に、民進党が合流を決めた。事実上解党した民進党を糾合する希望の党は、民進党の掲げていた政策より、小池代表が望む政策をより多く公約に掲げるだろう。そうなれば希望の党の綱領に近い内容が採用される。

希望の党への参加条件として、安全保障政策と憲法改正への姿勢が一致することを重視する、とも小池代表は表明している。安全保障政策、特に対北朝鮮政策では、9月25日の記者会見で安倍首相も小池代表に期待を寄せたように、あまり差が出ず、希望の党が自公両党に”抱きつき”、似たような政策を示すだろう。憲法改正では今のところ、自民党は自衛隊の位置づけを憲法第9条に明記する方針だ。また原発再稼働について、自公両党は肯定的だが、希望の党は完全な”逆張り”で原発ゼロを掲げている。

さらに「アベノミクス」の評価も、衆議院総選挙では争点になる。アベノミクスは安倍政権一番の看板政策である。野党はこぞってアベノミクスを批判し、失敗したことを強調するだろう。ここでも希望の党は、アベノミクスの”逆張り”を仕掛けてくるだろう。

消費増税についてだが、「凍結する」と明言した小池代表が率いる希望の党が主導権を握れば、予定通りの消費増税で増収分を社会保障に充てる案は却下される。そうなれば、民進党の前原代表が掲げた、“All for All”は消え失せる。他方、9月25日の記者会見で、安倍首相は消費税率を予定通り10%に引き上げ、高齢者だけでなく現役世代にも手厚い「全世代型社会保障」を実現すべく、子育て支援や教育無償化など歳出拡大に振り向ける、と言及した。この対比をみると、希望の党は、消費増税について自民党の”逆張り”をしているようである。

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