そんな中でも、テクノロジーの波は訪れつつある。きっかけになったのはマイナス金利や規制の変化である。
マイナス金利で儲からなくなった銀行は、コスト削減が死活問題になった。銀行株投資家の最近の注目ポイントも「コスト構造改革」となっている。
また、預金金利がほぼゼロとなったことで、取引コストへの不満も高まっている。たとえば、ほかの銀行への送金はネットを使っても手数料が432円もかかる(3万円以上の送金)。今の0.001%の金利を前提にすれば、4320万円もの資金を1年間預金にして初めて手にすることができる水準である。ATMの引き出し手数料も、1回につき108円以上かかる。
金融庁が制度面でフィンテックを後押し
また、金融庁も制度面からフィンテックを後押しすべく、昨年と今年の2度にわたり、銀行法を改正した。
1回目は昨年5月 。これにより、銀行は、自身や顧客の利便性向上に資するIT企業の株式であれば、今年4月から、従来の規定の5%(銀行持ち株会社なら15%)を超えて保有できるようになった。
2回目の改正は今年5月に行われた。これは、銀行や信用金庫に対して、銀行のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタ-フェース)公開の努力義務を課すものだ。「APIの公開」とは、内部システムの機能とその取扱説明書を外部に公開することである。APIの公開で、銀行用のアプリを開発する外部企業が手間を省ける。ただし、銀行システムに接続する企業は金融庁に登録しなければならないという義務を負う 。
こうした環境の変化を受け、大手行のテクノロジー開発は活発化している。3メガバンクは、デジタル担当役員を任命し、他業態との協業を開始した。三井住友フィナンシャルグループは、7月にNTTデータなどと共同で生体認証の会社を設立した。みずほフィナンシャルグループも、投資ファンドなどとともに、AIやブロックチェーン技術を活用する新会社を立ち上げた。三菱東京UFJ銀行 は、決済情報やSNS分析で米国の研究機関と覚書を交わした。
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