語学習得には「体を動かす」のが正解だった

語学と運動の不思議な関係性

具体的に言うと、学生たちはエクササイズ用のバイクをゆったりしたペース(それぞれの最大有酸素能力のほぼ60%)でこぐよう指示された。学生たちは授業20分前からバイクをこぎ始め、授業が始まってからも15分程度こぎ続けた。

記憶を長持ちさせる効果も

授業ではどちらのグループも、大型スクリーンに新しい単語が対応する絵(「apple」なら赤いリンゴの絵)とともに映し出されるのを見て単語を覚えた。1度の授業で表示される単語は40個だった。

授業が終わったらどちらのグループの学生も短い休憩を取り、語彙力を調べるテストを受けた。単語と絵の組み合わせが正しいかどうかをコンピュータのキーを使ってできるだけ早く答えるというものだ。また、新しく習った単語を使った文章を読み、意味が通っているかどうかを答えた(「The apple is a dentist」ならノーだ)。言語学においては一般的に、文章を理解できるということは単なる語彙の増加よりもさらに言語の習熟度が向上したこと示すと考えられている。

学生たちは8回の授業を2カ月間にわたって受けた。

各授業の後で受けたテストでは、バイクこぎをした学生たちのほうが座っていただけの学生たちよりいい成績を収めた。

また、文章が正しいかどうか見分けるテストでもバイクこぎをした学生たちのほうが好成績だった。もっとも、何度か授業を受けるまで、両者の差ははっきり見えてはこなかった。

最も興味深い点は、習得した語彙であれ単語の意味の理解であれ、バイクをこいだグループのほうが「長持ち」したということだ。授業終了から1カ月後に行った再テストでも、バイクこぎグループのほうが単語を多く覚えていて、文章で使われたときの理解も正確だった。

論文の共著者であるビタサルーテ・サンラファエーレ大学(イタリア)のシモーネ・スルピツィオ教授(心理学・言語学)は、「この結果は、学習中に体を動かすとより効率よく学べるようになることを示している」と語る。

スルピツィオ教授によれば、運動の効果は記憶を助けるだけにとどまらない。新たに覚えた単語の使い方への理解度もアップするという。

この研究では大学生に比較的軽い運動をさせたが、ほかの運動をしているほかの人たちでも同じ結果が出るかどうかはここからはわからない。

また、脳内で何が起きてこうした効果を生むのかについての手掛かりも示されてはいない。だが教授によれば、運動により脳内でさまざまな神経化学物質の放出が促され、脳細胞やニューロン間の結合が増えることを示す研究は数多いという。これにより脳の可塑性が上がり、学習能力もアップするというわけだ。

研究結果がどうあれ、現実世界への応用は難しいと思うかもしれない。フィットネス用バイクを置いてある教室などほとんどないからだ。だがスルピツィオ教授は、特別な道具は必要ないだろうと言う。

「私たちは学校や教師にたくさんのバイクを導入しろと言うつもりはない」と教授は言う。「言いたいことはもっと単純で、授業の合間に体を動かすべきだということになるだろう。何時間もじっと動かず座り続けているのは、学習の最善方法ではない」

(執筆:GRETCHEN REYNOLDS記者、翻訳:村井裕美)
(c) 2017 New York Times News Service

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