サウジが「女性の運転解禁」に踏み切った事情

人権的な理由だけではない

こうした危機感を背景に、ムハンマド副皇太子(当時)は2016年、兼務する経済開発評議会議長として、「ビジョン2030」を発表。その中では、非石油政府収入を1630億リヤルから1兆リヤルに拡大、民間部門での45万人の雇用創出、国際競争力指数を25位から10位に向上、労働力に占める女性の割合を22%から30%に引き上げるといった経済改革における野心的な目標を掲げた。運動やスポーツの促進、平均寿命を80歳に向上させることも掲げ、物心両面での豊かな社会の構築を目指す意向も表明した。

こうした経済改革を実現するには、女性の社会進出拡大は欠かせない。サウジでは高等教育に進む割合は女性のほうが高いが、通学手段に苦労するなどして卒業に至る割合は男性よりも低い。女性の運転解禁によって、女性の社会進出や自動車の購入拡大をはじめとした消費の拡大にもつながりそうだ。

ツイッター上で出回っていた憶測

実はサウジでは最近、何らかの重大発表があるのではないかとツイッター上で憶測を呼んでいた。

サウジアラビアではムハンマド皇太子への権力集中が進んでいる。Saudi Press Agency提供(写真:ロイター)

中東専門家は、サルマン国王からムハンマド皇太子への早期の権力移譲の可能性もあるのではないかとの見方も示していた。こうした憶測が流れるほどにムハンマド皇太子への権力集中が進む中、野心的なビジョンをまとめ、改革を矢継ぎ早に実行する皇太子への国民の信頼も高まっている。

ムハンマド皇太子はかねて、運転解禁に賛成する考えを示しており、国王の決定ながらも、皇太子の功績としてもみなされる可能性がある。運転解禁に向けた決定は、皇太子への権力移譲を視野に入れた環境づくりという意味合いがあるとの見方もある。

一方、サウジはイスラム教の宗派間対立が深刻化する中で、シーア派の大国イランとの関係悪化が長引くほか、カタールとも6月に断交。軍事介入したイエメン紛争は泥沼化の様相を呈している。

シリア内戦でも、イランやロシアが支援するアサド政権の存続が確実な状況になっており、外交的には厳しい立場に置かれている。革新的な政策を果敢に進めるカタールなどほかの湾岸諸国から政策面では遅れを取っており、国力向上やイメージアップのためにも、女性問題や人権分野での改革が迫られていた。決定は、原油資源の上に胡座をかいてはいられないサウジの厳しい内外の環境を示すものともいえそうだ。

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