「日本株はオイルマネーで復活」は甘すぎる もはや産油国は「超大金持ち」ではない
日本株がジリジリと値を戻している。利上げ懸念に米国大統領選挙、英国のEU離脱決定後の動き等々、さまざまな不透明要因を抱える中、日経平均株価は約半年ぶりの高値を付け、1万7000円台が定着たようにも見える。
本当に「オイルマネー」は戻ってきたのか?
この動きを後押ししたのは、やはり海外投資家だった。9月まで日本株を大幅に売り越してきた海外投資家は、10月に入って2週連続で買い越しに転じている。
海外投資家の動きが原油価格の上昇と時を一致したものであったこともあり、一部ではオイルマネーが戻ってきたという観測も広がっている。
しかし、結論から言えば、オイルマネーの回帰に期待を寄せるのは、時期尚早だといえそうだ。
世界の金融市場において、日経平均株価が半年ぶりの高値を記録したことよりも重要なニュースは、これまで国際金融市場で資金調達をしてこなかったサウジアラビアによる国債175億ドル(約1.8兆円)の起債である。今回サウジアラビアが行った175億ドルという起債規模は、アルゼンチンが4月に行った165億ドルを上回り、新興国の過去最高規模である。
サウジアラビアが大規模な資金調達に動いたのは、原油価格の下落によって2015年の財政赤字が国内総生産(GDP)の約15%に相当する970億ドルに及んだことが影響している。つまり、今回のサウジアラビアによる大規模な起債は、それだけ財政が逼迫していることを示したものでもある。
しかも、現在原油価格は石油輸出国機構(OPEC)による減産期待などを背景に1バレル50ドル台を回復してきているが、それだけで産油国の財政問題が解決するわけではない。
実は、市場を通して資金調達を行っている産油国は、サウジアラビアだけではない。カタールが5月に90億ドル起債したほか、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ首長国やオマーンなど、2016年に入り産油国は財政悪化を補うために海外市場で積極的に資金調達している。すでに今年の債券発行額は約700億ドルと2015年の2倍に達し、暦年の過去最高を上回っている。
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