ケンコーマヨが新工場を次々に建設するワケ 共働き増加で「中食市場」が拡大している

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共働き世帯の増加、個食化といった社会背景から、中食市場が最近特に活況を呈している。しかし実は、同社では、1977年とかなり早い時期からこの市場に参入していた。そのきっかけとなった商品が「ファッションデリカフーズ」という業務用サラダだ。業界では“ロングライフサラダ”と呼ばれているこのサラダ、サンドイッチにはさむ具材として開発された。最大の特徴が常温で72時間保存できることで、開発当時、画期的だった。

「それまでは、夏場にはサンドイッチの具材はジャム、焼きそば、メンチカツぐらいしかなかったので、このロングライフサラダは非常に受け、現在もトップシェアです」(京極氏)

この商品の発売をきっかけに同社は“サラダの会社”として歩みを進めるようになる。また、マカロニや卵、ポテトなどベーシックなサラダだけでなく、サラダの具材としては当時登場していなかった、ごぼうやかぼちゃもサラダに取り入れた。そのほか厚焼き卵などの卵加工品、野菜のみじん切りなどの素材系などへと商品を拡大してきた。結果、マヨネーズ、ドレッシングなどを含むすべての商品を合わせ、現在同社では顧客ごとの個別対応を含め、約1500種類の商品を扱う。このように商品数が多いだけでなく、さらに、うち250~260種類ほどは新開発の商品で、つねに入れ替わっている状態だという。

「最近では、居酒屋チェーン向けに、煮物などの和総菜や素材系が伸びてきています。和総菜は1袋500グラムの使い切りサイズで、そのまま器に盛りつけられること、また高級感があるということで人気です。食品素材とはカット、下ゆで済みの野菜などのこと。人手不足を背景に、手間がかからないものが喜ばれるようになっているわけです。また、昔は業務用というと大容量でしたが、最近は廃棄ロスを低減するため、小型化ニーズが高まってきています」(京極氏)

そのほかユニークな例としては、コンビニのおでんの具材として、だし巻き玉子の販売が伸びてきているという。卵サラダなどと合わせ、卵製品は売り上げ前年比11.6%増と好調だ。また商品のなかには、売り上げ前年比20%増のものもあるという。2017年3月期の売上高は708億1200万円(前年比5.8%増)で、6期連続の増収を記録。市場ニーズを細かくとらえつつ、スピーディに対応できるのが同社の強みといえそうだ。

ドレッシングやマヨネーズだけでなく、素材系から和総菜、卵製品と商品構成は幅広い(筆者撮影)

このような成長ぶりには、いくつかの秘密がある。本社7工場、連結子会社7社9工場を擁し、1日に何度も種類を切り替えながら商品を製造できる生産体制や、正確な在庫管理システムといったハードの充実が挙げられる。これにより、1500を越えるアイテム数を抱えながら、利益を維持することができる。

「在庫管理は以前は手作業で行っていましたが、非常に時間がかかり、残業が多かった。そこで10年前に情報システムを入れ替えたのですが、ちょうど中食市場が伸びている時期にあたり、4年前ぐらいから利益が大きく伸び始めました」(京極氏)

「メニュー提案型」の営業

そのほか特徴的なのが、営業と商品開発の方法である。同社の営業は“メニュー提案型”で、たとえばドレッシングを販売する場合には、そのドレッシングを使った新しいメニューを提案する。ドレッシングはサラダにかけると決まったものではなく、魚や肉のソースを作るときにも役立つのだそうだ。

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