逆浸透膜の仕組みは、こうだ。半透膜という特殊な膜で仕切った器の片方に塩分の濃い水(塩水)と淡水とを入れると、まず淡水が塩水のほうに半透膜を通じて移動する現象が起こる。その後、両側の塩分濃度が等しくなると移動は止まり、このときの水位を「浸透圧」と呼ぶ。この状態で、塩水側に浸透圧以上の圧力を加えると、塩水中の水の部分だけが半透膜を通じて真水側に押し出され、塩水から真水が作り出される。
東洋紡は30年前から海水淡水化用逆浸透膜の実用化を手掛けてきた先駆けでもある。三酢酸セルロース(CTA)を素材にした「中空糸膜」と、膜を集めて大型化し真水を作り出す「モジュール」の開発に成功したのは78年だった。
当時、米国ではダウ・ケミカル社が同じCTAを、ライバルのデュポン社がポリアミドを素材とした中空糸膜とモジュールを開発していた。だが、東洋紡のCTA素材中空糸を利用したモジュールの優位性が、80年代半ばから強みを発揮していく。結果、ダウ・ケミカルは自社開発を断念、ベンチャー企業を買収してポリアミド素材の中空糸ではないモジュールに転進。またデュポン社はこの事業そのものから撤退している。
「論より証拠」でデモ行脚 口コミで受注積み上げる
「逆浸透膜は信頼性に欠ける、と長く思われていた時代があった」と東洋紡アクア膜事業部の藤原信也部長は打ち明ける。開発したばかりのCTA中空糸膜を使った逆浸透膜モジュールを持って中東地域を回り始めたころは、逆浸透法はなかなか認められなかったという。
当時主流だった海水淡水化の方法は「蒸発法」。100年前から使われていたこの方法は、海水を重油などの燃料で加熱し、蒸発した蒸気を冷却して真水を得る方法。装置は大規模になり、加熱する際の燃料の量も膨大。なのに取水率わずか十数%。当然高コストだ。低効率の蒸発法に甘んじている中東の人たちに、どうすればアピールできるか--。
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