メキシコ地震、市民が見た心底恐ろしい光景 自宅付近の建物は今も倒壊しそうなまま

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自宅付近の建物は今にも崩れそうな状態だ(筆者撮影)

執筆時点で地震から3日経っているが、今この瞬間も状況は混沌としている。支援が必要な場所についての情報が多く飛び交い、時にその情報は矛盾している。また、住民たちは、緊急車両が効率的に動けるように、無駄な外出を控えるように言われている。

私の家から1ブロック離れた建物は深刻なダメージを受けている。巨大な鉄のフェンスが車の上に落ち、多くの外壁が剝がれたのだ。近いうちに崩壊を予見させる大きな亀裂も入っている。バルコニーも建物から剝がれかけているように見え、今にも落ちそうだ。安全対策の専門家たちが訪れ、鉄のフェンスを何とか取り除こうとしている様子が窓から見える。

メキシコシティは地震対策をしてきていた

報道などによると、これまでに地震によって約270人が亡くなり、約30の建物が倒壊した。しかし、技術者たちが建物を修復したり、人々が送る建物の写真にアドバイスをしている様子を見ると、さらに多くの建物が倒壊する危険性があるといえる。

32年前に起きた地震では、約3万人が犠牲となり、5万の建物が倒壊したことを考えると、前回ほど地震の被害は大きくなかった、といえるかもしれない。過去の経験から、地震に耐えうる街を作ろうと多大な努力をしてきたことが功を奏したのかもしれない。

メキシコシティは、建築物の耐震において最も厳しい基準を採用している都市である。高層ビルは大きな揺れに耐えられる柔軟な構造となっている(ただし、政治汚職が蔓延しているメキシコでは、新築でも耐震基準を満たしていないビルが少なからずある)。

また、防災サイレンも市内の至るところに設置されており、揺れを察知した瞬間に発動する仕組みとなっている。これによって、人々は建物から迅速に避難したり、建物内で安全な場所を探すことができるわけだ。もっとも、震源からの距離や地盤の固さによって、サイレンが発動する時間が異なる場合があり、市内で同じ瞬間に一斉にサイレンが鳴るとはかぎらない。

メキシコシティでは、避難訓練も定期的に行われている。1985年の地震の式典を毎年行うのは、人々に地震への対応方法を思い出させ、教える目的も含んでいる。幸い、そして偶然にも、私を含む多くの人は、9月19日も地震が起きる2時間前、11時に避難訓練を行っていた。大企業の社員の中には、人々が建物から非難するのを手伝うボランティアチームに参加している人もいる。ショピングモールや公共の建物では、警備員がこの役割を果たす。

次ページ地震後に見られた「メキシコ人らしさ」
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