死と向き合った人が越える「魂の痛み」の正体

「いい人生だった」と振り返るための処方箋

しかし、終活はこうした実際的なことだけにとどまりません。後悔の念を抱いたままこの世を去ることは、死ぬ間際まで襲ってきます。

今は健康に過ごしていても、いつ病気に見舞われるかわかりません。もし「余命1年」と宣告されたら、それは“魂の痛み”としてその人に襲いかかってきます。

がんなどの病気にかかると、多くの人がこの“魂の痛み”を感じます。この痛みは、治療後の痛みや後遺症で今までできていたことができなくなってしまう「身体的苦痛」、治療費やこれからの生活に不安を抱く「経済的苦痛」、家族や周りの人に迷惑をかけてしまうという「社会的苦痛」とは別の痛みです。

「死ぬことが怖くて不安でしょうがない」

「孤独でつらい」

「自分の世界が壊れたみたいで生きていることが苦しい」

「自分の生きる意味や価値がわからなくなった」

「なぜ自分だけこんなつらい苦しみを味わわなければならないのか」

「家族と二度と会えなくなると思うとつらい」

このような「生きる意味」を問う感情は、終末期患者が抱く症状で、「スピリチュアルペイン」と呼ばれています。こうした“魂の痛み”は、死を意識した瞬間から生じるもので、人生で必ず誰もが一度は経験するものなのです。

魂の痛みとどう向き合い、どう克服していくのか?

人世を穏やかに過ごすために、そして「いい人生だった」と思ってこの世を去るために、スピリチュアルペインをどうやって乗り越えていけばいいのか。

拙著『こころの終末期医療』で詳しく解説していますが、実は、私自身がこのテーマに取り組んだ転機がありました。実は脳梗塞などで3度の手術を経験し、私自身がこのスピリチュアルペインを感じたからでした。言い換えれば、自分自身が抱いたスピリチュアルペインを乗り越えようと、取材の旅に出たのです。

私は痛みの正体を知るべく、聖路加国際病院で終末期医療に従事しているチャプレン(牧師)のところへ赴きました。そこでは、さまざまな患者たちの魂の叫びを知ることになったのです。

諍(いさか)いがあった子どもと和解をすることを望む人、残される家族の心配をする人、仕事での後悔をする人、自分自身を認められないで苦しむ人、死にたいという思いにとらわれている人など、彼らは患者の話にただ傾聴し、患者の魂の声が発せられるまでそばに寄り添います。そして、彼らの魂の叫びを知ったとき、そっと患者の心を癒やすのです。

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