死と向き合った人が越える「魂の痛み」の正体 「いい人生だった」と振り返るための処方箋

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結局、心の救いは自分自身が見つけ出し克服していくしかありません。それは、人生における最期の活動ともいえるのです。

取材で悟った生きる意味

スピリチュアルペインという心のケアをする現場では、科学的な医療技術ではなしえないケアが取り組まれています。さらに、残される家族の心の痛みも同時に緩和していくグリーフケアも行っています。こうした緩和ケアは「スピリチュアルケア」といわれ、さまざまな理論も存在します。

そのなかで有名な「村田理論」は、スピリチュアルペインを人間存在の「時間性」「関係性」「自律性」という3つの次元から分析し、これらの喪失から“魂の痛み”が生じるとしています。

私はこの3つの軸に沿って、スピリチュアルペインの正体と、それを克服していった方たちをかつての取材から思い起こしました。現在でもそれぞれの次元を克服して活躍されている方、亡くなりはしましたが最期にはそれを乗り越えて人生を全うした方など、彼らは私に生きる意味を教えてくれました。

・参議院議員の三原じゅん子さん

・元横浜ベイスターズ投手の故・盛田幸妃さん

・女優の音無美紀子さん

・華道家の假屋崎省吾さん

・俳優の故・萩原流行さん

・元NHKアナウンサーの山川静夫さん

・日産GT-R開発者の水野和敏さん

『こころの終末期医療』(フォレスト出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

彼らは、「時間性」「関係性」「自律性」の喪失というそれぞれの痛みを見事に克服していきました。彼らの乗り越えていく過程は、人生の幸福、生きている意味や価値を獲得できるヒントとなりました。終末期ケアの現場やかつての取材を通じて、死を迎える前にスピリチュアルペインを少し乗り越えられたのではないかと思っています。

今年7月に亡くなった聖路加国際病院の日野原重明名誉院長は、よく「看護はアート」と述べていたといいます。日野原さんは晩年、自分や周りに対して「死をどう生きるか」という問いを発し続けていました。誰もが死に向かう人生を、最期のときにどう結実させるかという意味だと語っていたそうです。

相続・葬儀・墓ももちろん大事ですが、終活で最も忘れてならないのは、実は自身の「心の終活」なのです。

入江 吉正 ジャーナリスト

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いりえ よしまさ / Yoshimasa Irie

1952年佐賀県生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。貿易商社勤務ののち、雑誌編集者に。『月刊文藝春秋』(文藝春秋)、『週刊ポスト』(小学館)の記者を経て、現在フリージャーナリスト。『月刊文藝春秋』記者時代、同誌2000年12月号で「『バスジャック少年』両親の手記」を発表し、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞スクープ賞」を受賞。2度の脳疾患で死の瀬戸際に立たされ、さらに3度目の脳梗塞により半身麻痺を患い、現在も療養しながら精力的に取材・執筆活動を続けている。

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