”アップル化”狙う、マイクロソフトの野望 モバイル企業へと駆け上がれるか

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筆者は、ノキアの端末を日本で2機種使ったことがあるが、そのカメラの性能と独特の端末の雰囲気、そしてスライドやボタンなどのギミックの心地よさが特徴だと感じていた。フィーチャーフォンの時代からスマートフォンの先駆けまで、市場を形成し牽引してきたノキアの姿と、日本の携帯電話メーカーの姿をどうしても重ねてしまう。

日本の携帯電話は1999年からインターネットに接続され、日本のユーザーと社会を高度なモバイル先進国に育ててきた。ノキアのお膝元、フィンランドでも同様の存在だったのではないだろうか。

しかしノキアは、巨大な世界シェアを失い続けている。この3年間で、ノキアのスマートフォン(インターネットサービスに接続可能な携帯電話)のシェアは、37%超から5%以下へと急減した。その期間に、CEOを務めていたのが、イロップ氏だ。

目指す姿は、アップルか、グーグルか

マイクロソフトとアップルは、パソコン市場で一度明暗を分けている。パソコン市場では、ソフトウエアに注力したマイクロソフトがアップルのシェアを駆逐した。ジョブズ氏がアップルから追われている時期にアップルも「マック互換機」に取り組んだことがあったが、マイクロソフトのような成果が得られないまま、ジョブズ氏が復帰して全て中止された。

今度はマイクロソフトがアップルの後を追おうとしている。スマートフォンとタブレット市場では、デバイスとソフトウエアを一体的に開発し提供したアップルが、アプリストア「App Store」も含むエコシステムを構築し、シェア以上の収益性と市場の決定権を得るようになった。

一方、現在最も巨大なスマートフォン勢力になっているグーグルは、PC市場でのマイクロソフトのようなポジションながら、OSからの収益を得ず、本業の検索やクラウド、そしてアプリストア「Google Play」からの収益を狙っている。しかもグーグルはモトローラ・モビリティを有しており、デバイスを作ることもできる。

マイクロソフトは、ウィンドウズフォンをHTCやサムスンなどノキア以外のメーカーにもライセンスしているため、今はグーグルに近いスタイルだが、ビジネスとしてはアップルに近づけ、デバイスとアプリストアでの収益を両立させていきたいはずだ。

マイクロソフトのノキア買収、グーグルによるアンドロイド 4.4「KitKat」のアナウンス、そして翌週米国時間9月10日には、アップルがプレスイベントを開催する予定で、新型iPhoneがリリースされるとみられる(次回はiPhoneについて詳しくお伝えする)。9月上旬のモバイルに関しての活発な動きは、今年の後半から来年を方向付けることになりそうだ。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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