奇想天外「国鉄が現在も続く」小説の誕生秘話

「電車でGO!」の仕掛け人が小説家に転身

出版社が思い切ったアイデアを選んでくれたことに応えようと豊田は、国鉄時代の資料を読みあさり、鉄道関係者に取材を行い、「まだ国鉄があったら……」という仮説にリアリティが出るよう世界観設定に磨きをかけた。そのときに培った、小説にはまったく登場しない路線、組織、車両等の裏設定まで作り込んでいる姿勢は次に発売される14巻の今まで続いている。

『RAIL WARS! -日本國有鉄道公安隊-』の主人公は、鉄道学校の男子高校生である。平和を愛し、“親方日の丸”の安定生活を夢見る主人公・高山直人は学年でたったひとり、憧れの日本國有鉄道、通称「國鉄」の学生鉄道OJTに選ばれることになる。ただし、その部署は彼の望んだ運転課ではなく、鉄道公安隊だった……。

そんな設定のもとに高山直人は、嬉々として合法的に銃をぶっぱなす過激な仲間たちに振り回されながら、國鉄で起こった事件の犯人やテロ組織と戦う日々を送ることになる。鉄道公安隊での学生鉄道OJTが、早く平穏無事に終わってくれればいいと願いながらも、そうはうまくいかない……という楽しい鉄道ライトノベルである。

中井貴一主演映画とスター・ウォーズを足して2で割る

「国」鉄ではなく、「國」鉄と記されていることからわかるように、これはもちろん仮想の、パラレルワールドの日本である。往年の「国鉄」の魅力をかつてのファンと最大限共有しながらも、フィクションとして最高に楽しい「國鉄」の魅力を若い人に伝えたいと豊田は思った。

『RAIL WARS! -日本國有鉄道公安隊-』1巻kindle版(画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

書く内容が決まってから、奥村と豊田はプロモーションの戦略を練った。その仕掛けは数多くある。たとえば、初め豊田が提案したタイトルは現在のサブタイトル「日本國有鉄道公安隊」であった。しかし漢字ばかりで重いかもしれない。ライトノベルなのに重いタイトルはどうだろう。そんなときに「中井貴一主演の映画、『RAILWAYS』は露出が多いね」「そうそう。スター・ウォーズの新作も発表されるらしいよ」「ならば、Rail Wars!でどう?」「いいね!」こんな軽妙な会話でタイトルは決まった。もっとも、決まってみれば耳になじみやすく、物語の内容をストレートに伝えられる優れたタイトルだ。

ターゲット層について考えているときに2人がイメージした設定がある。当時の中・高校生は月に2~5冊ライトノベルを買っているというデータが出ていた。そこで「1~3冊目まではシリーズなど買う作品は決まっているはず。だったら5冊目に買ってもらえるライトノベルを目指そう」という目標を立てた。

そのためには何をするか。着目したのは表紙である。

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