イギリスの「チャヴ」が暗示する日本の末路 弱者を敵視しすぎる階級社会 

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マデリーンは高級リゾート地の寝室から、シャノンは水泳教室から貧しい公営住宅への帰り道で、その行方がわからなくなった。マデリーンは中流階級の少女で、シャノンはチャヴの子供だったのである。マデリーンは中流階級以上の人々の大いなる共感をよんだが、シャノンは「両親の破滅的な家庭環境の犠牲者」とみなされたにすぎなかったのだ。

残念ながらマデリーンは見つからなかったが、シャノンは発見された。しかし、そのことは、さらに悪い展開を見せる。シャノンの誘拐犯は、5人の男性との間に7人の子供をもうけた無職の女性・カレンのパートナーのおじであった。そのカレンはなんとシャノンの母親、驚いたことに報奨金ほしさからの犯罪だったのである。メディアは、誘拐犯よりもカレン、そしてカレンが住む地域を容赦なく攻撃する。

軽蔑感に満ちた対応をするメディアや、政治家たち

カレンと同じような境遇の人や、同じ公営住宅に住む人は、この事件のニュースの報道において同じような社会不適合者として描かれた。「この種のコミュニティに属する人々はある意味で人間以下だ」と論評する評論家まであらわれる。実際には、そのコミュニティでは、犠牲的精神を発揮してシャノンのことを探そうと必死になって探し回ってくれた人がたくさんいたにも関わらず。

この事件が如実に示すように、メディアも政治家もチャヴに対する対応は冷たく、軽蔑感に満ちている。その大きな理由は、マスコミ従事者はほとんどが中流階級の出身で、チャヴに知り合いなどおらず、その生活実態をまったく知らない、というのがいちばんの理由である。両者の社会階層が重ならないのだ。

メディアが事件を歪曲して伝える中、それを利用する政治家もあらわれる。保守党だけでなく労働党のニューレイバーたちまでもが、生活保護受給者を大幅に減らすことにした。とんでもないことだ。これは、ほとんどの政治家はメディア関係者と同じく、いや、それ以上にチャヴたちとはかけはなれた境遇に育っていることを抜きには考えられない。

あなたは、メディアや政治家の姿勢を当然、あるいは、やむを得ないと思うだろうか。少し考えてもらいたい。もし、これが、ある少数民族に対する姿勢であればどうだろうかと。けっして許されることではない。しかし、チャヴが相手なら容認されてしまうのである。シャノン事件だけではなく、ほかにもいくつかの実例があげられている。恐ろしいことだ。

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