iPhone Xの本質は「夢を実現する遊び場」だ 発展のカギは「アプリ開発者が面白がるか」

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会場にはアップル最高デザイン責任者のジョナサン・アイブ氏の姿も(筆者)

そういった視点で今年の新製品、いや少し遡って6月のWWDC(開発者会議)を振り返りながらiOS 11について考えてみると、今後10年は言い過ぎとしても、アップルは今までの枠組みから踏み出していくための準備を着々と整えているように思う。iPhone Xの場合、全面ディスプレー化に伴うジェスチャー操作、赤外線を使った空間認識・個人認証、AR(拡張現実)に最適化した各種センサーのチューニングなど。これらの新機能も、アップルによる実装例を紹介しているだけ、といえなくはない。

夢を実現するための「遊び場」

実際にiPhone Xで提案した要素が実を結ぶかどうかは、アプリ開発者たちが面白がるかどうかにかかっている。開発者がiPhone X向けに面白いアイデアを思いつき、どのように組み込もうとするか。アップルは未来を100%描くのではなく、エンジニアが夢を実現するための「遊び場」を整えようとしているのではないだろうか。

現時点でiPhone Xは100点満点の魅力を備えた提案とはいえないかもしれない。しかし、少なくとも近年どのスマートフォンにも感じなかった、次の時代に向けた投資・提案性のある製品だ。この提案に乗ってくる開発者や企業が、アップルの用意したフィールドで遊び始めれば、将来、その満足度は100%に近付くだろう。

多くのスマートフォンメーカーは強くiPhoneを意識しており、「iPhoneよりも素晴らしいスマートフォン」を作ろうとしている。しかしアップルがiPhone Xで見据えているのは、商品としての端末の優劣だけではない。未来を創り出す開発者たちにとって、より自由な「遊び場」を作ることなのである。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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