――そうした能力を北朝鮮が有しているという事実は、米政府が予防攻撃を検討する十分な理由になりうるか。
米国が冷戦の間、ソ連に対してとっていた、そして実際に現在ロシアと中国に対してとっているような封じ込めと抑止戦略をとるべきだ、と私は考えている。
ロシアおよび中国政府は、現在の北朝鮮政府が持つ量をはるかに越える核戦力を保有している。米国はこれに納得していないが、この状態の中でサバイブしてきた。米国は、北朝鮮に対して先制攻撃も予防攻撃も行うべきではないし、実行可能な選択肢でもない。予防攻撃を行えば、戦争を防止するための戦争に発展するだけだ。
ドナルド・トランプ政権が、こうした攻撃を検討しているかどうかは、ハッキリとしていない。が、もし米国が脅威と感じる、あるいは危険だと思える技術的レベルに北朝鮮が達することがあれば、軍事的選択肢もテーブルの上に載ってくる、とレックス・ティラーソン国務長官は3月に発言している。
また、ハーバート・マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官は、北朝鮮が米国を核弾頭で攻撃する能力を持つことは容認できないと大統領に伝え、大統領が予防攻撃の選択肢を考えるように指示した、と述べている。トランプ大統領は実際、くしくも長崎の原爆投下の日に、乱暴な言葉を使って北朝鮮を挑発した。これははたして、単なる攻撃ではなくて、核攻撃をも意図する発言だったのだろうか。
が、これを境に、ジェームズ・マティス国防長官、ティラーソン国務長官、マイク・ポンペオCIA長官は、この選択肢から背を向けようとしているように見える。政府関係者は複雑なメッセージを発しており、真相はわからない。つまり、(攻撃の)可能性は低いが、その可能性はゼロではないということだ。
抑止力は一定の効果を発揮している
――なぜ抑止力は、金政権に機能していないのか。今の北朝鮮と、スターリン時代のソ連、毛沢東時代の中国との違いは何か。
まず、抑止力が機能しないという前提に、私は同意できない。マクマスター大統領補佐官は、抑止力が北朝鮮には機能しないと示唆しているようだが、彼の推論は、予防攻撃を提唱するほかの人々の推論とは異なっているようだ。正恩氏は非常に残忍なので、古典的な抑止力は通用しない、とマクマスター補佐官は考えているわけだ。
スターリンと毛沢東は、金一族以上に多くの自国民を殺害しているが、彼らに対しては、抑止力は機能しており、彼らが米国や同盟国を攻撃することはしなかった。一方、北朝鮮は戦術レベルの攻撃を展開したことも時にはあったが、米国が韓国を守るという約束があるために、大規模な攻撃は思いとどまってきた。
われわれは、自国と同盟国を守らなければならず、抑止と封じ込め戦略を実行するために、弾道ミサイルなどしっかりとした防衛能力が必要だ。
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