米国が北朝鮮渡航禁止に踏み切った真の目的 ミサイル発射に対する報復ではない

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米国が北朝鮮への渡航禁止に踏み切る目的は3つある(写真:ロイター)

北朝鮮と米国が朝鮮戦争の休戦協定に調印してから64年、米国務省は9月1日、米国民の北朝鮮への渡航を禁止した。

渡航禁止は、ドナルド・トランプ大統領の数々の粗悪な政策の中でも 比較的簡単に行われる措置である。トランプ大統領は、8月29日に北朝鮮が日本上空を通過するミサイルを発射した後、「すべての選択肢が検討されている」と述べ、北朝鮮への警告についてはまだ詳しくは触れていない。しかし渡航禁止は今後の措置についての予兆かもしれない。

渡航禁止の3つの目的

北朝鮮渡航制限が行われる背景には、北朝鮮が過去10年間、さまざまな理由をつけて15人の米国民を拘束し、米政府と交渉する取引材料として利用してきたことがある。これは、米国の当局者が、これらの米国人を確実に解放しようとして、資源、時間、政治的資本を費やしてしまうパターンである。

大変悲劇的なことであるが、6月には北朝鮮が拘束していたバージニア大学の学生、オットー・ワームビアを昏睡状態で米国に送還した。数日後、彼は亡くなり、国務省が渡航禁止措置に踏み切るきっかけとなった。これとは別に、またワームビアの死の前に、超党派による米国人北朝鮮渡航禁止法案の審議が議会で進み始めていた。法律がどのようなものとなるのかは、今回の国務省の禁止措置が法案にどのように影響するのかを含めまだ明らかではない。

しかし、渡航禁止は何をもたらすのだろうか。米政府には、主に3つの目的がある。米国人が北朝鮮の「取引材料」として利用されるのを防ぐこと、観光ドルが流通する体制を認めないとすること、そして、北朝鮮の行動を容認できないというメッセージを送ることである。

第1の目的は部分的には達成できるだろう。渡航禁止にすることによって、観光ビザで北朝鮮を訪れる毎年1000人もの米国人のうち、1人でも当局に目をつけられるリスクが直ちに軽減されるからだ。

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