自社の商品やサービスを広めていくうえで、企業にとって欠かせない手段が広告宣伝活動だ。スマートフォンの普及を追い風にしたネット広告の拡大によって、広告は過渡期にあり、企業がブランディングや販促にどれほどのおカネをかけるかも毎年、変化していく。
東洋経済オンラインでは、毎年、企業が広告宣伝にかけるおカネを独自に調査。有価証券報告書の2017年4月期までの1年間のデータを基に、2017年度版の広告宣伝費に関するランキングを作成している。今月配信した「『広告宣伝費』が
1位は、トヨタ自動車。堅調な業績を受けて広告も高水準を維持し、昨年に続いてトップになった。総額4487億円は断トツだが、売上高広告費比率に注目すると1.63%で、この水準は同業他社と比べても高くない。ただ、売り上げ規模の大きいトヨタがどう動くか、その動向が広告市場全体に与える影響は非常に大きい。トヨタに続く2位は、日産自動車。業績が堅調だった自動車大手が、上位10社のうち5社を占めた。
認知度獲得を狙うサービスやブランドがあれば、将来の大きな収穫のための先行投資と考えて、広告宣伝費を急増させることもある。このような急上昇企業もランキング上位に顔を出した。
順位を急上昇させたサイバーエージェント
ネット業界から唯一、トップ10入りしたのがサイバーエージェント。昨年の27位から、今年は9位と順位を急上昇させている。
サイバーエージェントの直近本決算にあたる2016年9月期は、5年前と比べて190億円強の増加となる253億円を投入した。2016年4月にテレビ朝日との共同事業として開局したネット放送局「AbemaTV(アベマティービー)」の認知度向上に注力していることが主因だ。2016年9月期は第3四半期に65億円、第4四半期に99億円と下期に広告宣伝費を集中投下。今期も第1四半期に91億円を投入し、第2四半期以降も前年度を上回るペースで広告出稿を続けており、前期を上回る水準になる見通しだ。
5年前と比べての宣伝費増減率という観点からは、トップになったのはコロプラ(ランキング17位)だった。5年前に2億7900万円だった広告宣伝費は、2016年9月期は100億円まで増加した。実に5年前の約35倍の広告宣伝費を投入したことになる。ただ、大ヒットの主力スマホゲーム「白猫プロジェクト」には息切れが見られる。今後は、広告宣伝費を「白猫」に投じつつ、大ヒットを目指す新作ゲームにも振り向ける必要があり、難しい判断を迫られることになりそうだ。
ランキングは、直近の有価証券報告書(2016年5月期~2017年4月期)の損益計算書かその注記と、5年前(2012年5月期~2013年4月期)の双方に、広告宣伝費の開示があった企業を対象としている。対象745社のうち、433社が増加させた。広告宣伝費と販売促進費が分けられない場合は合算値を用いて算出。項目名による判断によって取りまとめた。明らかに開示範囲が変わったと判断できる場合のみ対象から除いた。業種は一般会社のみとした。広告宣伝費が一般管理費の10%に満たない場合は、有価証券報告書に開示が義務づけられていないため、開示を行っていない企業も多いことも併せてお伝えしておこう。
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