企業のブランディングや商品の販促に欠かせないのが、広告だ。近年は従来のテレビや新聞、雑誌に加えて、検索エンジンやサイト、SNSなどを活用したネット広告にも領域が広がっている。ただ、広告宣伝費には企業の業績が悪化するなどした"守り"の局面では、いったん削減される対象となりやすい性質もある。
東洋経済オンラインでは、最新の有価証券報告書のデータを基に、広告宣伝費に関するランキングを配信している。今月配信した「『広告宣伝費』が
ランキング1位はキヤノン。直近の広告宣伝費は5年前と比べて約3割減少した。当期純利益の1506億円という水準は、リーマンショック以降でみても最低であり、業績は苦しい。
同じようにカメラ事業を展開するオリンパス(5位)や富士フイルムホールディングス(15位)も広告費の削減額で上位になった。自動車業界と並んで好調と思われていた精密機械メーカーだが、スマートフォンの普及でコンパクトデジタルカメラ市場が縮小している影響は大きい。
2位のキリンホールディングスは629億円と、5年前に比べ169億円減少させた。広告宣伝費は5年連続の削減だ。直近の2017年12月期第2四半期の決算説明資料からは、事業ごとに広告に関する力の入れ具合に違いがあることが読み取れる。ビール事業では対前年比で広告費を減らしたものの、清涼飲料分野では増加させた。広告全体は抑制傾向だとしても、力を入れたいセグメントには優先的に広告を投入して、最適解を模索している。
スマホゲームの広告費は変動が激しい
広告費の変動が圧倒的に大きいのがスマホゲームを主力事業とする各社だ。スマホゲームはヒットの兆候を見逃さずに、積極的に広告を投入すれば爆発的なヒットも期待できる。だが、その一方で競争は熾烈であり、急速なユーザー離れが起きるケースもある。5年前にヒット作を出し、業績が堅調だったグリー(3位)とディー・エヌ・エー(8位)は、一転して大幅な削減に転じた。5年間の宣伝費増減率に注目すると、スマホゲームの栄枯盛衰がわかる。
ランキングは、直近の有価証券報告書(2016年5月期~2017年4月期)の本表か注記と、5年前(2012年5月期~2013年4月期)の双方に、広告宣伝費の開示があった企業を対象としている。調査対象は782社。広告宣伝費と販売促進費が分けられない場合は合算値を用いて算出。業種は一般会社のみとした。明らかに開示範囲が変わったと判断できる場合は対象から除いた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら