米の鉄道財政難「NY駅緊急工事」で浮き彫りに 保線できずトラブル続発、政権は無反応

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だが、PRRは1950年代をピークに全米が鉄道離れを起こす中で衰退。1970年には解散に追い込まれる。その後、コンレール社を経てアムトラックがこの資産を承継、ワシントンDCからNYの「北東回廊線」も、ペン駅も、ハドソン川のトンネルもアムトラックが保有している。

一方で、LIRRはPRRの黄金時代にはその傘下であったが、1960年代にNY市が買収して、地下鉄などと一体化したMTR(ニューヨーク交通公社)の一部として現在に至っている。NJTは比較的新しく1979年にニュージャージー州が設立した第三セクターの郊外鉄道である。

40年保線せず?相次ぐ脱線

問題は、アムトラックが慢性的な経営難に陥っているということだ。このために、定期的に実施しなくてはならない保線工事がキチンと行われていなかったのだが、そのことは意外な形で浮き彫りとなった。今年、2017年の3月にアムトラック車両が6番線で、また4月にはNJT車両が9番線で脱線したのである。

3月の事故は特急車両の脱線で、脱線した車両が隣を走っていたNJTの通勤列車に側面衝突し、約1200人の通勤客が車内に閉じ込められた。そして4月の事故はNJTの車両そのものが脱線し、このときも1000人が閉じ込められている。いずれも平日朝の通勤時間帯であったために、事故車両以外の乗客も長時間の立ち往生を強いられることとなり、社会的な非難が高まった。

原因は、この部分の構内線について保線がキチンと行われておらず、特に渡り線のポイント(アメリカではスイッチという)の点検を怠っていたために、低速で通過する箇所であるにもかかわらず、徐々に軌道に狂いが生じていき脱線に至ったということのようだ。

特にPRR時代に西のハドソン川底トンネルと、東のイーストリバー川底トンネルに直結する形で最初に建設された9番線から14番線については、1970年代に保線を行った後、現在に至る40年間、本格的な保線や検査が行われていないという疑いが出てきたのである。この6線はアムトラックとNJT(6線とも)LIRR(13番線と14番線のみ)が共用しており、保線管理の責任をアムトラックが負っている。

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