米の鉄道財政難「NY駅緊急工事」で浮き彫りに 保線できずトラブル続発、政権は無反応
この状況を見てニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事は、LIRRの経営責任者として、そしてNY市のインフラ全体の監督責任を持つことから、アムトラックに対して「即時改修」を強く要求した。知事は「度重なる脱線事故のたびに、利用者は通勤地獄(ヘル)を経験してきた」と迫る一方で、LIRRとNJTは年間50ミリオン(約55億円)をアムトラックに対する「保線費用」として負担していると主張。今回の緊急補修工事についてはアムトラックが負担すべきだとした。
そのアムトラックから、7月から8月の約2カ月間の工期で補修を行うという案が発表されたのは5月初旬だった。9番線から14番線を2カ月間閉鎖するという案に、LIRRとNJTのサイドは驚いた。ニュージャージーの州議会からは、7月4日の独立記念日の連休明けから工事を行うのは怠慢であり、もっと前倒しをという声も出たが、結局このアムトラック案で補修を行うことになったのである。
LIRRとNJTは早速、期間中の臨時ダイヤの編成を行った。NY州のクオモ知事は、「十分な対策を取らないと『地獄の夏(サマー・オブ・ヘル)』になる」として、通勤客が混乱しないよう対応を指示。以降、地元のメディアは、この「地獄の夏」という言い方をするようになった。
大規模プロジェクトで混乱回避
対策は徹底したもので、まずLIRRはロングアイランドからマンハッタン島への、そしてNJTはニュージャージー州からマンハッタン島への東西のトンネルを使った乗り入れ本数を半数近くに減らすことになった。一部路線は地下鉄との乗り換え駅を終点にして、また別の路線はフェリー乗り場に行き先を変更するなどの臨時ダイヤが組まれた。NJTもLIRRも、このように「不便を強いる路線」については、期間中の運賃を割り引いたりもしたのである。
この2者は最新のデザインによる特設ホームページを設けて工事の進捗を告知したり、NJTの場合は並行して走る高速道路に「NY直通のアムトラックは工事中」という表示をしたり、徹底したPR作戦も行っている。
アムトラックも、NY州北部のオーバニー方面からの特急(1日3往復)の終点を、ペン駅からグランドセントラル駅に変更、またペンシルベニアの中西部からの中距離特急のNY乗り入れを中止して途中で折り返すなどの措置を取った。
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