三菱地所の地震速報、気象庁より「早い」実力 「首都圏直下型地震」への備えを強化
気象庁の緊急地震速報よりも早く、大地震の揺れを察知する――。東京・丸の内の"大家"と呼ばれる三菱地所は、首都直下型地震に備えて、独自の速報システムを8月に導入した。
緊急地震速報が出るよりも早く大地震の揺れを察知し、高層ビルのエレベーターを非常停止階に止め、エレベーター内の閉じ込め事故を減らしたり、避難誘導に生かしたりする。オフィスビルへの導入は日本で初めてだ。三菱地所が動いたことをきっかけに、こうした取り組みが加速する可能性が見えてきた。
グループ7物件に地震計を設置した理由
三菱地所が直下型地震の速報システムを稼働させたのは8月初旬から。三菱地所グループ関連の7物件(新丸ビル〈東京都〉、サンシャイン60〈同〉、東久留米ショッピングセンター〈同〉、横浜ランドマークタワー〈横浜市〉、酒々井プレミアム・アウトレット〈千葉県〉、佐野プレミアム・アウトレット〈栃木〉、御殿場プレミアム・アウトレット〈静岡県〉)に地震計を設置した。
これらの物件は震源となりうる断層の近くにあり、そこで感知した「初期微動(P波)」の情報を東京・丸の内に伝え、大きな揺れをもたらす「主要動(S波)」の到着予想時間や大きさを計算する。それを基に新丸ビルなどの丸の内エリアの4棟の高層ビルに独自の地震速報を伝える仕組みだ。
三菱地所が導入した速報システムは都内の技術開発型ベンチャー、「ミエルカ防災」が開発した「ユレーマス」というシステム。これは独自に地震計を設置するとともに気象庁の速報データも活用しながら、大きな揺れが来る前に速報を出すことを目指している。
気象庁の緊急地震速報は、全国1000カ所余りの場所に設置された地震計がP波を検知し、そのデータを基に震源や規模を推定し、速報を出すもの。早く速報を出すには、より早期にP波を検知する必要があり、地震計がきめ細かく設置されているほうがよい。ただ、東京都内に設置されている地震計は二十数カ所にとどまる。
今回、三菱地所は7つの自社物件にそれぞれ3カ所ずつ地震計を設置したため、気象庁の観測地点よりきめ細かな観測ができる。また自社物件に地震計を設置しているので、ビルやショッピングセンターにP波が到着するとほぼ同時に検知でき、気象庁から情報が伝わるよりも早く、地震に備えることができる。しかも三菱地所が設置した地震計は東京都心の外縁部にある断層の近くに位置するため、東京に深刻な影響を与える断層の動きを素早く知ることができる。
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