マクロン支持率急落が示す現代社会の大問題 「トランプの世界」は簡単に変えられない

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同大将は去り、少なくとも今のところ防衛費は削減されたが、ほかのものは削減されていない。たとえば、7月に発表された住宅手当に対する1カ月5ユーロの削減は、すぐに廃止された。この削減は社会の最貧層の人々にとって、最大の影響力があっただろう。公約となっていた減税もまた、延期された。これは、エドゥアール・フィリップ首相による戦略だったが、同首相はフランスを、「借金の火山」の上に腰掛けていると評していた。

マクロン大統領の新党、「共和国前進」は議会を支配しているが、熟練した政治家がほとんどいない。一方、左派の政治家で、有力な雄弁家、ジャン=リュック・メランション氏は強力な議会論争を展開したが、同氏が率いる「La France Insoumise (服従しないフランス)」の議席数はわずか17にすぎない。この住宅手当削減の論争の間、同氏は精白パン、パスタ、野菜の缶詰といった5ユーロの割引食料品の袋を見せ、このグルメ大国で貧困が意味するものを派手に示した。

9月には抗議集会が多数予定されている

過去数年という短い期間で収入や富の格差が拡大したフランスは依然、平等が社会的善と考えられている国だ。ところが、マクロン大統領はこの文化に抵抗しようとした。このため、数週間後に政治シーズンが再開するとき、労働市場を自由化する同大統領の計画は、労働組合の反対に直面するだろう。

最も影響力のある労働総同盟は、すでに闘いを宣言している。ほかの労働組合は注意深くなっているが、メランション氏とそれ以外の左派政治家に支持され、大統領人気の低下を利用しようとしている。抗議集会が多数予定されている9月には、左派、極右、労働組合のすべてが、別々、あるいは一緒になって、路上で大統領の改革に疑問を投げかけるだろう。

マクロン大統領と同大統領を支持する世界はいまや、自らが設定した目標の影響力の大きさを感じているだろう。また、欧州をさらに統合する必要があると主張しているときでさえ、自国の利益を追求しなければならない立場にあることを痛感しているに違いない。

EUの中心にある論争は、強い矛盾を示したままだ。ユーロ通貨をもっとうまく管理し、国家間の経済政策を調整するための統合を望む声は、自らが選んだ政治家に責任を問いたいという市民の声になっている。欧州人が、数百万人の米国人とともに、ますます失いたくないと望んでいるのは、国家責任の能力だ。

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