長期間続く異例の金融緩和政策は、金融機関や投資家に過剰なリスクを取らせる働きをしているおそれがある。異次元の金融緩和政策では、ETF(上場投資信託)を日銀が購入しているが、これによって日銀は株式市場に影響を与えており、投資家の行動を変えてしまっている可能性が大きい。
債券市場でも低金利の圧力によって投資家が過剰なリスクテイクを行っている恐れがある。株価が大幅に変動することに比べれば、国債をはじめとした債券の価格変動は小さい。だが、債券を購入している投資家はもともとこれを前提に投資を行っているので、大規模な損失が発生した場合の金融市場の混乱はむしろ大きい可能性もあるだろう。
「デフレ脱却」と長期金利ゼロは矛盾
グリーンスパン元議長は、投資家が想定している米国の将来の物価上昇率や短期金利が近年の経済状況に引きずられて異常に低くなってしまい、債券市場のバブル(債券の価格上昇・金利の低下)が起こっていることを懸念しているようだ。
日本の長短金利操作付き量的・質的金融緩和では、長短金利を直接操作することが政策の中心となっている。しかし日本経済をデフレから脱却させるという目標と、日銀のコントロールで実現しているイールドカーブの形は矛盾していると考えられる。これは、グリーンスパン元議長が米国の債券市場に対して懸念を示しているような、「低い短期金利が今後長く続く」という期待を日銀が作り出しているようなものだ。
現在の長期金利の水準は、いずれデフレから日本経済が脱却するというシナリオに従った短期金利の予想から純粋仮説を使って求めた理論値と大きく乖離していて、長期債の保有者は、将来大きな損失が生じるおそれが大きいことを意味していると考えられるだろう。
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