日銀が膨張させた「債券バブル」はどうなる? グリーンスパン元FRB議長の警告から考える

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長期間続く異例の金融緩和政策は、金融機関や投資家に過剰なリスクを取らせる働きをしているおそれがある。異次元の金融緩和政策では、ETF(上場投資信託)を日銀が購入しているが、これによって日銀は株式市場に影響を与えており、投資家の行動を変えてしまっている可能性が大きい。

債券市場でも低金利の圧力によって投資家が過剰なリスクテイクを行っている恐れがある。株価が大幅に変動することに比べれば、国債をはじめとした債券の価格変動は小さい。だが、債券を購入している投資家はもともとこれを前提に投資を行っているので、大規模な損失が発生した場合の金融市場の混乱はむしろ大きい可能性もあるだろう。

「デフレ脱却」と長期金利ゼロは矛盾

グリーンスパン元議長は、投資家が想定している米国の将来の物価上昇率や短期金利が近年の経済状況に引きずられて異常に低くなってしまい、債券市場のバブル(債券の価格上昇・金利の低下)が起こっていることを懸念しているようだ。

日本の長短金利操作付き量的・質的金融緩和では、長短金利を直接操作することが政策の中心となっている。しかし日本経済をデフレから脱却させるという目標と、日銀のコントロールで実現しているイールドカーブの形は矛盾していると考えられる。これは、グリーンスパン元議長が米国の債券市場に対して懸念を示しているような、「低い短期金利が今後長く続く」という期待を日銀が作り出しているようなものだ。

現在の長期金利の水準は、いずれデフレから日本経済が脱却するというシナリオに従った短期金利の予想から純粋仮説を使って求めた理論値と大きく乖離していて、長期債の保有者は、将来大きな損失が生じるおそれが大きいことを意味していると考えられるだろう。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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