欧州統合の象徴「ユーロスター」に4時間の壁

大陸側への乗り入れが広がらないワケは

パリ北駅のユーロスター出口。出入国審査は出発地のロンドンで行われるので、下車はスムーズだ。列車到着時のみ、ガラスのゲートが開けられる(筆者撮影)

まずは出入国審査の壁だ。欧州大陸側は、EUに加盟していないスイスなども含め、原則的にパスポートチェックや税関検査を必要としない「シェンゲン協定」を結んでいる国がほとんどだ。しかし、英国はシェンゲン協定に加盟していないので、現在も出入国の際は審査を必要とする。ユーロスターの場合、駅を出発する際に出国審査と入国審査を同時に行っており、たとえばロンドンのセントパンクラス駅で改札を抜けると、すぐにX線荷物検査があり、それが終わると英国の出国審査、さらにその先に大陸(EU)側の入国審査が待ち受けている。

これはユーロスターの発着するすべての駅で行われていて、出入国の審査を一気に済ませてから乗車をすることになる。つまり、発車前の待合室やプラットホームは、厳密には英国ではなくEU圏内(パリやブリュッセルの場合は逆)となるため、制限区域を各駅に設けなければならない。ユーロスター専用のホームを用意する必要があるのだ。

現在、アムステルダム中央駅では、構内のいちばん北側に位置する15番線ホーム先端付近に、ユーロスター用のX線検査場、出入国審査場、待合室などを設置する工事を開始している。途中停車駅として名前の挙がるロッテルダム中央駅も、スペースに余裕があるので、おそらくこうした設備を設けることは問題ないはずだ。

スキポール空港駅に停車する列車。ホームは4本8線しかなく、ユーロスター専用ホームを建設することは不可能だ(筆者撮影)

とはいえ、そこをユーロスター専用ホームにするということは、他の列車はそのホームを使えなくなる。同じく停車駅の候補となっているスキポール空港駅については、ホームが4本8線しかない。現状でも、この4本のホームをフル活用している状況では、1日にわずかな本数しか乗り入れないユーロスターのために、わざわざ専用のホームと待合室を設けることは困難だ。オランダへの乗り入れが無事にスタートしたとしても、スキポール空港駅は問題が解決するまでは通過することになるだろう。

「4時間の壁」クリアにハードル

もう一つの問題は「4時間の壁」だ。

すでに定説になっている高速列車の4時間の壁とは、高速列車か航空機か、そのどちらを利用するかの選択の分かれ目が4時間、といわれているからだ。

開業当初、英国内の高速新線(HS1)の開業が遅れたために英国内では在来線を走行していたユーロスターは、ロンドンからパリまで3時間を要していた。だが、高速新線開業後の現在は2時間15分と45分も短縮され、ブリュッセルは2時間を切って最速1時間51分に。いずれも圧倒的に航空機よりユーロスターが有利で、値段で勝負の超格安LCC以外、この区間でユーロスターには太刀打ちできない。

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