ビックカメラ・ナムコが組む、新カフェの正体 老舗キーコーヒーが挑む「一挙両得」の戦略

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また、キーズカフェの顧客にポイントを付与したり、クーポンで集客したりするなど独自策を導入することも可能だ。大手チェーンに知名度は劣るものの、「店舗ごとに独自のメニューや施策を盛り込むことができるのはメリット」(ビックカメラ)。

開業支援は、企業だけではなく個人もターゲットにしている。大阪で雑貨店に併設した「いしばしや&キーズカフェ阪急石橋駅前店」の三崎良太氏は「大手のFC(フランチャイズ)チェーンには併設を断られたところもあったが、キーズカフェは柔軟に設計、出店できた」と話す。

加えて、費用面でのハードルも低い。立地にもよるが、開業費用の目安はドトールコーヒーの場合、25坪で4500万円ほど。キーズカフェの開業費用はFC加盟金が含まれないことなどもあり、目安は30坪で約3000万円と割安だ。開業後もFC料を支払う必要はない。

喫茶店減少やチェーン化が進展

キーコーヒーのロゴも、喫茶店の減少により、見掛ける機会が減っている(写真:尾形文繁)

キーコーヒーが積極的にこうしたカフェの開業支援を行う背景には、同社の焦りがある。

キーコーヒーは業務用のコーヒー販売が強み。だがスターバックス コーヒーやドトールコーヒー、コメダ珈琲店など大手チェーンの台頭が進む一方、販売先である喫茶店の総数は減り続けている。

全国の喫茶店の数はピークだった1981年の15万4630店から、2014年には6万9983店と半数以下になった(事業所統計調査・経済センサス)。

キーコーヒーは2005年に「イタリアン・トマト カフェジュニア」を運営するイタリアントマト、2012年には老舗喫茶のアマンドを買収。2013年には「喫茶室ルノアール」を運営する銀座ルノアールを持ち分法適用会社にし、販売先の確保に努めてきた。

開業支援を本格化させているのもこの流れの一環だ。キーズカフェは開業後、キーコーヒーが指定する同社製品を購入する必要があるため、店舗が増えれば販売先が増えることになる。

また、キーズカフェを広告塔にキーコーヒーのブランドを広め、家庭用製品の販売を伸ばす狙いもある。開業支援事業は、業務用の販売先確保と家庭用の販売拡大を狙うことができる一挙両得の戦略なのだ。

喫茶店が全盛を誇っていた時代には、喫茶店の看板・メニュー作りなどをキーコーヒーが支援し、自社のロゴが入った立て看板を掲出してもらうことでブランドの認知も図っていた。喫茶店とともに看板の掲出数も減る中、キーズカフェ自体がその役割を担う。

キーコーヒーは出店目標などを掲げてはいないが、収益貢献に一定の規模は欠かせない。田口賢一郎ブランド開発営業部長は、「まずは1人でも多く集まる場所に、1店舗でも多く導入していきたい」と語る。認知度を高め出店を加速できるか。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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