「投資レジェンド」が教える今買うべき会社 日本経済の「潮目」は変わりつつある

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そこで勝負をするくらいなら、デファクトスタンダードの獲得競争は、あくまでも米中両国にしていただき、その勝者に対して部品や素材を供給したほうが、より合理的だ。世界の成長エンジンは、現時点において米国と中国なので、その両国の間をうまく取り持ちながら、両者を顧客にしていく「米中おこぼれ戦略」は、なかなかしたたかで、有効な戦略だと思う。日本には、米中両にらみでビジネスを展開するうえでの地の利があるので、デファクトスタンダードを獲得した国への部品供給基地になればいい。

また、確かに米中両国に比べると、どことなく弱さを覚える日本経済だが、ではドイツやイタリア、フランスなど欧州諸国に比べて、経済面で大きく後塵を拝しているかと言われれば、それは違う。

この手の欧州諸国に比べれば、日本経済は技術力、工業力、開発力などさまざまな面で、まだまだ勝てるだけのポテンシャルを持っている。「短納期」「高品質」を徹底的に追求すれば、日本経済は「華麗なるナンバースリー」という立場を維持できるし、さらに成長できる可能性がある。

過日、安倍晋三首相は「中国の一帯一路に協力する」という旨の発言をしたが、この言葉の背景には、おそらく財界人の意識の変化があるはずだ。つまり、米中に伍して国際競争を繰り広げるのではなく、部品や素材を、デファクトスタンダードを勝ち取った国に提供するほうが得策だ、という意識変化である。それが証拠に、今期決算の見通しにおいては、設備投資について強気の見方をする企業が増えてきた。おそらく企業には、このようなしたたかな戦略に切り替えていけば、自分たちはまだまだやれるという自信があるのだろう。

「華麗なるナンバースリー国家」の日本企業は「買い」

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これから設備投資を増やすとなれば、今までのように、いつまでも内部留保をためておくことはできない。世界経済が再び成長軌道に乗るなかで、いよいよ内部留保を吐き出し、設備投資や人材投資に資金を振り向ける企業が増えていくだろう。それは、取りも直さず日本国内の景気にとって、ポジティブな要因になる。

また、デファクトスタンダードを取らず、華麗なるナンバースリーを目指すことによって、日本は今まで以上に外貨を稼げるようになる。そして、稼いだ外貨を医療や介護などに投入することで、真の福祉国家を構築していく。それによって新たな雇用機会も生まれる。

とはいえ、雇用が生まれるのはよいことだが、誰もが実感しているように、今の日本は人口減少社会に入っており、むしろ人手不足が深刻化している。加えて、働き方改革が推し進められ、残業に対する批判の声も高まっている。したがって、新たな雇用機会を生み出すだけでなく、業務の効率化を図り、生産性を向上させるための合理化投資が必要になってくる。一例を挙げると、あらゆる業務領域にロボット化が広まっていくだろうし、センサーに対する需要も高まっていくはずだ。半導体製造装置、産業用ロボット、コンデンサー、センサーなどを製造している企業には、これから注目しておくといい。

鈴木 雅光 JOYnt 代表、金融ジャーナリスト

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すずき・まさみつ / Masamitsu Suzuki

1989年岡三証券入社後、公社債新聞社に転じ、投信業界を中心に取材。2004年独立。出版プロデュースやコンテンツ制作に関わる。著書に『投資信託の不都合な真実』、『「金利」がわかると経済の動きが読めてくる!』等。

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