「勝てないアマ投資家」には何が足りないのか ファンドマネージャーが持てない武器を使え

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プロの運用成績をはるかに凌駕する個人投資家はかなりの数で存在します。それに、これはある種の皮肉ですが、そもそもインデックスを下回るアクティブ投信の数が多いということであれば、単純にインデックス投信を持っている個人投資家の運用成績はみんな、多くのプロの運用成績を上回っているということになります。

アマチュア投資家は、いつでも運用を休める

 では、多くのファンドマネージャーはプロとしての値打ちがないのでしょうか。いえ、決してそういうわけではありません。投資をする時に大切なのは、投資対象の分析をしっかりおこなうことです。投資しようと思っている会社の財務内容を分析したり、その会社に出かけて行って経営者や現場を見たりすることはとても重要なことです。プロはそういうことができるのに対して、アマチュアの投資家は恐らくそこまでやる時間はありません。情報量ということで言えば、アマは逆立ちしてもプロが得る情報量にはかなわないでしょう。

ではなぜ、そんなに豊富な情報量を持っているプロでもアマに勝てないなどということが起こるのでしょうか。それは「プロはどんな状況になっても常に運用し、動き続けなければならない」のに対して「アマはいつでも運用を休むことができる」ということだからです。

言うまでもなく、プロというのは人様のおカネを預かって運用するのが仕事です。さらに競争相手の運用会社もたくさんあります。その上、ファンドには決算があり、期間収益を上げることが求められます。1年間の運用成績を見て悪ければ他の運用会社に乗り換えられてしまうことだってあります。

年金基金などは当然そういう行動を取るでしょうし、個人で投資信託を買っている人だって、あまり成績が良くなければ他に乗り換えようと考えるのはごく自然なことです。つまり、プロは常に比較される競争相手の存在を気にかけながら、期間収益を上げなければならない、という宿命を負っているのです。相場が悪い時でも悪い時なりにしのいでいかなければなりませんし、逆に上昇相場になった場合は「持たざるリスク」を意識せざるを得ません。

これに対して個人投資家はどうでしょうか。個人には決算などというものはないので、期間収益など気にする必要はありません。他の人との比較も意味はありません。人が儲けようが損しようが、それはどうでも良いことで、自分が儲かるか損するかだけが、関心事だからです。

相場が悪い時は敢えて運用する必要はなく、まだまだ下がりそうだと思ったらさっさと手仕舞ってキャッシュで持っていればいいのです。そんなにうまく手仕舞うことができず、もし相場を読み違えて大きく下がってしまっても焦る必要はなく、辛抱して持っていれば、いずれは戻る時が来ます。

つまり、これらが素人の個人投資家が持っている最大のアドバンテージなのです。相場というものはどんなに精緻に分析したり予想したりしても、必ず予想外のことが起こります。

そうしたことが起きた時に、どれぐらいゆとりを持って対処できるかということが実は運用結果に意外と大きな差を生み出すのです。したがって個人投資家が最もやってはいけないことはプロの真似であり、「無理をすること」、「焦って行動する」ことだと言ってもいいでしょう。何もわざわざ不利なプロの投資家と同じ心理的状態に自分を追い込む必要は全くありません。そうならなくても良いぐらいの金額の資金で投資すること、それこそアマがプロに勝てる秘訣と言えるのではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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