36歳「売れない女優」が狙う芸能界復帰の道 現実に折り合いをつけながら「夢」は続く

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里穂さんは「30歳までに女優として成功しなかったらあきらめる」と決めていた。そして、もう1つの夢である「子どもを産み育てる」にシフトするつもりだった。しかし、30歳になる直前に芸能事務所に所属できた。迷った末、親の許しも得て「延長戦」に突入。その頃に出会ったのが、現在の夫である8歳下の賢二さん(仮名)だ。

出会いの場は里穂さんのアルバイト先であるコールセンターだった。高校を卒業してから正社員として働いている賢二さんは、里穂さんたちの研修を担当。分厚いマニュアルを読み込んで研修の下準備をし、丁寧に教えてくれる賢二さんに好感を持った。

「コールセンターのアルバイトは年齢層も高くて、ほかの仕事で教える立場だったような人も結構います。私も塾の講師をしていたことがあります。がんばって準備して来ている賢二さんは若いのにエライなと思いました。私は仕事でリーダー役をすることもありますが、『オレについてこい』的な強引なリーダーシップなんです。でも、賢二さんは私たち一人ひとりの性格を把握して、注意の仕方などにも気を配っていました」

結婚や出産を前提としたうえでの恋愛

尊敬する気持ちが恋心につながったのはうそではない。ただし、結婚を視野に入れていなければ優しくて人がいい賢二さんと付き合うことはなかった、と里穂さんは明かす。結婚や出産を前提としたうえでの恋愛もあるのだ。

「尊敬できるところがある男性が好きなのは昔から一貫しています。20代の頃は反骨精神がある強い男性が好きでした。結婚を意識して初めて、わかりやすい強さとは違うところに目を向けられたのだと思います」

仕事仲間でお酒を飲んでいるうちに、里穂さんと賢二さんはどちらからともなく親しくなっていった。しかし、芸能事務所は原則として恋愛禁止である。里穂さんは自らの恋心には気づいていたが、賢二さんとふたりきりにはならないように気をつけていた。1年後、事務所から恋愛の許可が下りる。「私、30歳だけどいいの?」と里穂さん。「こちらこそ、こんなに年下だけどいいの?」と賢二さん。優しく甘いやりとりだ。

「結婚前提でなければお付き合いをしたくないこと、生活のために週に1回はキャバクラで働いていること、仕事優先なので事務所の許可なしでは動けないことの3つの条件ものんでくれました。彼は柔らかい雰囲気だけど男気があるんですよ」

賢二さんは里穂さんの芸能活動を応援しているわけではない。里穂さんが仕事の話をしても聞きたくない様子だ。テレビが嫌いなわけではなく、自分の恋人が遠い世界の話をするのが嫌なのだ。嫉妬や不安もあるのだろう。里穂さんはその気配を素早く察知し、賢二さんの前で芸能界の話はいっさいしなくなった。

交際が始まって半年後には同棲を始めた。「男気」のある賢二さんは里穂さんの親にも挨拶。完全に結婚前提である。ちょうどその頃、里穂さんは「目標を達成したメンバーで映画を作る」という企画内容のBS番組への出演が決まる。アイドルのような活動をしなければならず、恋愛は再び禁止となった。賢二さんとの関係は隠さざるをえず、もちろん結婚はできない。1年間ほど頑張っていたが、先行きが見えず、映画化の話も立ち消えになり、里穂さんは事務所を辞めることを決意した。34歳になっていた。

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