年金の支給要件緩和に喜ぶ人、心配が募る人 「財源なき前倒し」に勝算はあるのか
日本の年金制度は、かつて5年に1度の割合で保険料の再計算を行う「財政再計算」が法律で義務付けられていた。その時点での人口予測や経済動向など、年金を取り巻く状況を加味しながら、当面の保険料を決めていたわけだ。
ところが、5年ごとの財政再計算のたびに、「将来の見通しは悪くなり先行き真っ暗になっていく」という印象を国民に与えてしまった。そこで、2004年改正では、こうした5年ごとの保険料率見直しをやめて、最終的な保険料水準をあらかじめ設定して自動的に保険料率を調整する方法に改められた。これが「保険料水準固定方式」と呼ばれるものだ。
財政再計算をやめる代わりに、少なくとも5年に1度は「財政の現況及び見通し(財政検証)」を作成して公表する制度に変わったのだ。厚生労働省は、これを「財政再計算から財政検証へ」というキャッチフレーズで説明してきたのだが、簡単に言うと「保険料の見直し」に、それまでのように年金受給者を支えている「現役世代」の減少に備えて「マクロ経済スライド」を導入。人口が減少したり、賃金が増えたりしなくても年金制度は立ち行く方法に改めた、と考えればいい。
物価や賃金の伸びによって支給される年金額や保険料を調整していこうというものだ。100年後であっても現役世代の平均収入の50%以上を年金で維持するという「100年安心」といった言葉も、この当時に出たものだが、いずれにしても年金制度に対する不信感がいま現在も続いているのは事実だ。
日本の年金制度は本当に破綻するのか?
5年に1度の財政検証の最新版は、2014年度版として発表されているが、以前に比べて将来見通しのケースを「ケースA」~「ケースH」まで並べて、さらに「オプション試算」と呼ばれる資産検証を実施している。
簡単に要約すると、物価上昇や賃金上昇などの将来見通しを細かく設定して、約束した「所得代替率50%」は維持していますよ、ということを提示している。
所得代替率というのは、現役世代に対して何%の年金給付を確保できるかを示した数値で、50%を割り込むと年金収入だけの人は現役世代の平均収入の50%以下を意味する「貧困層」になってしまう。
たとえば、今回の2014年度の財政検証の目玉は「オプション試算」という名の将来見通しを提示したことだ。とはいっても、それほど目新しいことがあるわけではなく、大きく分けて次の3つのオプションを提示している。
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