孫社長「買収は近く意思決定する、話せない」 ソフトバンクは「10兆円ファンド」で大幅増益

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最終利益は98%減益の55億円だった。これは昨年、中国EC大手・アリババ株を資金化する際に用いたデリバティブ損失(1778億円)が影響したものだ。

孫社長は「実質では61%増益」と説明(撮影:尾形文繁)

ソフトバンクはアリババ株売却の実現前に現金を得る目的でデリバティブを用いたが、その後に株価が上がれば「本来得られたはずの利益が得られなかった」として評価損を計上する。今回は過去3カ月間でアリババ株の株価が上がったために評価損を計上した。

このデリバティブは、契約した2016年6月1日から3年後の2019年6月に契約満了を迎える。「(満了までに)多くの評価損を立てていれば、その分だけ(満了時に)評価益が戻ってくるので問題ない」と孫社長は解説した。

買収について、「近く決定するので話せない」

質疑応答ではスプリントと同業TモバイルUSとの統合交渉について質問が集中した。孫社長は「複数の事業統合の相手先を想定し交渉を行っている。われわれは近い将来実現すると思っているからなおさらのこと、コメントを控えさせていただきたい」と述べるにとどまった。

「スプリントのマルセロ・クラウレCEOはケーブル会社ではなく携帯事業者が理想といっている。Tモバイルが本命という考え方は生き続けているのか?」と食い下がられても、「意思決定する時期が近い。複数の相手を考えている。ヒントになることは残念ながらいえない」と語った。

auが先日公表した格安プランの影響について「まったくない」と語った宮内副社長(撮影:尾形文繁)

また、「KDDIが月々1980円~のプランを導入し好調だ。対抗して格安プランを導入する予定はないのか」と水を向けられた。

国内通信担当の宮内謙副社長は「まったく考えていない。ワイモバイルは好調だし、ソフトバンクもどんどん伸びている」と明言。孫社長は「(KDDIの新プランは端末代金と通信料金とを)分離するプランということで、実際には値下げになっていないのではないか」と付け加えた。

さらに、米配車アプリ「ウーバー」への出資意思はあるかと聞かれると、「正直悩んでいる。(同業の)リフトもいいと思っているので、リフトとも話をしたいと思っている。いずれにせよ米国のシェアリングマーケットには非常に興味がある」と回答した。

明言こそしないものの、さまざまな可能性について語った孫社長。巨額買収、巨額出資はどうやら今後も続きそうだ。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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