邦人初!宇宙飛行士トップの「上り詰める」力

なぜ目立たなかった彼が、化けたのか?

「たとえばスペースシャトル発射のシミュレーション訓練では、『エンジン停止』『中央コンピュータ2つ故障』などトラブルが次々起こり、瞬時に対応しないといけない。専門用語や複雑なシャトルシステムは理解していても、宇宙飛行士やミッションコントロールセンターとの単純な英語会話が聞き取れず、予習をいくら頑張っても訓練中は歯が立たない」(若田)。

さらに2人乗りジェット機の飛行訓練が始まる。日本で航空機を操縦したこともないのに1週間ほどの地上講習の後、超音速も出せるジェット機で操縦桿を握る。「いきなり乗せられた」という感じだ。

NASA宇宙飛行士養成校時代、若かりし日の若田(写真中央)
(出展:NASA)

「相方のパイロットや管制官が何を言っているか理解できない。『頑張ってこいよ』と日本から送り出されて、頑張っているのに英語がなかなかわからない。本当に苦労しましたね」と、若田は当時を振り返る。

シミュレーション訓練ではシャトルを操縦不能の状態にさせてしまったこともある。『これで本当に宇宙に行けるのか』と悔しい思いをすると同時に、ホームシックにもなって、訓練から帰る車の中で、「はとぽっぽ」の歌を思わず口ずさんだこともあったという。

もちろん、ビジネスに必要な英語力は身に付けていた。だが宇宙の現場で使う英語は、いわば「戦争映画の戦闘シーンで使う英語」に近い。用語が特殊でスピードが速い。「獣医出身のアメリカ人の同級生は『俺も全然わからないから気にするな』と言ってくれました」(若田)。

英語ネイティブのアメリカ人でさえ、理解が難しい特殊な表現。だが、若田は「わからないなら、わかるようになるしかない」と、ある行動に出る。

若田はT38ジェット練習機操縦中のやり取りを録音して聞くことにした。録音するためにはヘッドセットと録音機材をつなぐプラグとアダプターが必要だ。しかし、市販品は見当たらない。

若田は前職で、航空会社の技術者として整備を担当していた。通信系統に雑音が生じないアダプターを作るのは難しくないと判断し、T38電装系整備担当者を聞き出し、頼みに行った。おそらくNASA宇宙飛行士の歴史の中で前代未聞のことだったはずだ。だが担当者は驚きつつ「簡単だよ」と、若田の要求に応えて機器を作ってくれた。

そこから、若田の巻き返しの日々が始まる。訓練に通う車の中でT38操縦訓練時の会話を繰り返し聞く。若田と一緒に飛行訓練を行ったNASA飛行士が、JAXA関係者にこんな話をしたという。

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