アップル、販売回復へ中国政府に「服従」 「シェア5位」からの脱却になりふりかまわず

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 8月1日、米アップルが中国での収益回復を狙い、悪名高い中国政府の規制にも従順に従う姿勢を示している。写真は同社のロゴ。上海で2012年2月撮影(2017年 ロイター/Carlos Barria)

[上海/北京 1日 ロイター] - 米アップル<AAPL.O>が中国での収益回復を狙い、悪名高い中国政府の規制にも従順に従う姿勢を示している。スマートフォンのシェアが落ち、政府の承認を必要とするサービス事業を拡大する必要があるためだ。

アップルは先週末、中国のインターネット検閲をすり抜ける「VPN(仮想私設網)」アプリの一部について、中国市場での配信を停止した。また政治的に重要な貴州省に中国初のデータセンターを置くと発表し、グレーターチャイナ(広域中華圏)担当のマネジングディレクターというポストを新設した。

貴州省は中国政府がハイテク拠点化を目指している場所で、習近平国家主席にゆかりの深い土地でもある。

アップルが1日発表した第3・四半期決算(7月1日まで)は、グレーターチャイナの売上高が9.5%減の80億ドルとなった。アナリストによると、かつて中国で人気を集めたスマホ「iPhone(アイフォーン)」は今、華為技術(ファーウェイ)、Oppo、Vivo、小米科技(シャオミ)といった国内勢の後塵を拝し、シェアが5位に落ちている。

コンサルタント会社カウンターポイントによると、アップルの中国でのスマホ出荷シェアは2015年に14%で天井を打ち、今年1─6月は9%に縮小した。

中国政府を味方に付ければ有利なのは間違いない。

北京のハイテクアナリスト、リー・シェンドン氏は「中国では他社にシェアを食われたため、今後は政府の規制にもっと注意を払う必要がある。中国はアップルにとって主要な市場であり、耳を傾けざるを得ない」と話す。

苦戦する中国事業の中で、アプリ販売の「アップルストア」やモバイル決済の「アップルペイ」などのサービス事業は数少ない明るい分野だ。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は四半期決算の説明で、中国でこれら事業が「極めて力強く伸びた」と述べた。

年内に予想されている新型アイフォーンの発表まで、端末の売上高は低迷を続ける可能性があるため、サービス事業の勢いを保つことは決定的に重要だ。

<秋波>

しかし、こうした戦略にはリスクも付きまとう。

中国はオンラインメディアやストリーミングなど「サイバースペース」の規制を強化しており、6月1日に導入した新法では、企業がユーザーのデータを中国国内に蓄積するよう促している。

この規制について、海外企業の間では曖昧過ぎるとの懸念が強いが、アップルは即座に新法に従い、データセンターの設置を発表した。

DCCIインターネット・リサーチ・インスティテュートのリュー・シンリアン所長は「データセンターの設立とVPNアプリの配信停止により、アップルは中国政府に秋波を送っている」と語る。

一部には、アップルが昨年、銃乱射事件に絡んで米連邦捜査局(FBI)からアイフォーンのロック解除を求められて拒否したことと、中国政府への姿勢は矛盾する、との指摘もある。

クックCEOは1日、この問題について「意見が異なる場合でも政府と対話していく」姿勢を明示。「米国のケースでは米国法が当社を支持していた。これは極めて明確だ。中国の場合には中国に明確な法律がある」とし、「2つのケースは大きく異なる」と話した。

「だからと言って、適切な方法でわれわれの見解を述べないというわけではない」とも述べた。

とはいえ、中国の検閲に従うような動きは国外で批判を呼ぶ可能性があり、アップルが賭けに出たのは明らか。ただ、中国の消費者は意に介さないでいてくれそうだ。

アイフォーンを使い続けてきたという27歳の女性は「アップルが中国政府と仲良くしようとするのは普通のこと。次世代(アイフォーン)が出れば買うわ。いつもそうしてきたから」と語った。VPNアプリはあまり使わないので、配信停止によって購入判断を変えることはないとも付け加えた。

(Adam Jourdan記者 Pei Li記者)

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