タカタ破綻で注目、「エアバッグ」生産の裏側 躍進する業界2位、日本プラストの工場へ潜入
一方、日本プラストは繊維メーカーから仕入れたナイロン製基布を用いてバッグを縫製。インフレーターは国内では化学メーカーのダイセルや日本火薬から、海外ではスウェーデンのオートリブや米国のZF TRWといった自動車部品メーカーから調達している。
豊田合成や芦森工業といったほかの大手もインフレーターは外部から供給を受けている。火薬材料には、先述の硝酸アンモニウムではなく、安全性に問題がないとされる硝酸グアニジンが使われている。
日本プラストがエアバッグモジュールの量産を始めたのは1990年。日産の北米向けモデル「サニークーペ」から搭載された。
同社の祖業は樹脂部品。ステアリングを手掛けた経緯から、エアバッグ事業に参入することとなった。1980年から慎重に開発を進め、市場投入までには10年の月日がかかった。先行開発部の長田秀彦・次長は「エアバッグは実績や経験値に左右される製品。他社がモジュールの組み立てに新規参入するのは相当難しいだろう」と話す。
細かすぎるほどのエアバッグ試験
日本プラストの展開試験では、時速40~60キロメートルでの衝突後、エアバッグが展開・収縮するまでの時間はもちろんのこと、乗員に向けて展開する角度や膨らみ具合など開き方も1秒間に5000コマを撮影できる超高速カメラで撮影して計測する。
また、最長で1週間、モジュールを温度や湿度を自在に変化できる試験装置に入れて性能に変化がないかも調べる。太陽光や振動の影響も計測するという。
日本プラストは自社で製造するエアバッグモジュールについては新車への搭載後15年間の品質保証を行っている。加えて、完成車メーカーが求める品質基準よりも厳しい自社基準を設けているという。量産品でも売れ筋車種向けで生産数量が多ければ、毎月1回、展開実験を行うほどの力の入れようだ。
「過剰品質だと思われるかもしれないが、人の命を預かっている以上、過剰にせざるをえない面がある。コストとのバランスが取れるかぎり、品質は高ければ高いほど良い」。豊田剛志・経営企画室長はそう話す。
今回工場を訪れた際には、日産の「ノートe-POWER」に搭載される運転席向けエアバッグモジュールの組み立てが行われていた。5人ほどのチームになっている。バッグは専用の機械で折り畳んだ後、別の機械で強い圧力をかけてステアリングのカバーに収納。これに厚さ約2センチ、縦横約4センチの箱型のインフレーターを取り付ける。
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