旅館の清掃従業員として働く65歳住職の困窮 「食えないお寺」が増えている

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同じ早川町の曹洞宗寺院の住職(53)は会社員を兼業する。14年前に先代住職の父親が亡くなり、「自分の生まれ育った寺を守りたい」と跡を継いだ。檀家は現在34軒だが、「兼業なら続けていける」と考えている。

檀家やお布施の収入が少なくても、工夫を凝らす寺もある。岐阜県神戸町の大源寺(臨済宗妙心寺派)は、寛文元(1661)年から続く。曽祖父の代から世襲になり、住職の桑海一寛(くわうみかずひろ)さん(40)は、4代目にあたる。

浄蓮寺にある日蓮上人像は金井さんと顔がそっくりだった。「20年ほど前、京都の仏具店に発注しました。毎日魂を込めて、お経を上げています」(金井さん)

120世帯ほどの集落に檀家は8軒。大垣市や京都に4軒が散らばり、合わせて12軒。お布施収入に頼らず、代々兼業で働いてきた。祖父は中学校教師、父は市役所に勤めていた。長男の一寛さんは、自然と寺を継ぐと思っていた。だが、小学校3年生の時、住職だった祖父が亡くなる直前、副住職の父親が自死。本寺が住職を兼務し、一寛さんは小学生で見習いの立場になった。「お経の練習に」と声をかけてくれた檀家に、経を読みに通った。

大学卒業後に僧になるつもりだったが、本堂の傷みが激しかった。「住職にならないことには、修復もままならない」。1年で大学を休学し、修行に出て、20歳で住職になった。復学して大学を卒業した後、働きながら僧侶を続けた。就職氷河期で苦労もし、年金徴収員もお寺の従業員もやった。現在は名古屋市内の役所に嘱託勤務している。

週末は他寺の手伝いに

檀家の法要は年に数えるほどなので、週末は葬祭業者紹介の仕事や他寺の手伝いに出る。寺の年間収入は約300万円だ。

「祖父の代の収支計算書を見ると、1年の布施収入が60万円で、40万円は祖父が個人収入から寄付して資金繰りをしていました。私の個人収入は祖父には及びませんが、お寺の財務状況はよくなっています。基盤をつくって、次の世代も続くお寺にしたい。仏教界の危機は、きちんと布教せず、葬儀や法要だけに頼ってきたことの結果では」

3年前、寺新聞の発行を始めた。戒名はなぜ必要か、色即是空はどういう意味か──。思いのほか反響は大きく、「今までわからなかったことを教えてくれた」「身近なところに仏教の教えがあるんだな」との声が、檀家以外からも寄せられた。かつて寺の境内で紙芝居が行われ、子どもが集まったように、人が集まる仕掛けをつくっていこうと決めている。

檀家の少ない集落でも、外に活路を見いだした人もいる。福岡県築上町の實成(じつじょう)寺(日蓮宗)の中村雅輝(まさき)住職(66)は、「寺も食べていかなければならないが、僧職の誇りを失うこととは違う」と語る。

37年前、住職として単身で赴任。67軒の檀家が力を合わせ、守っている寺だった。ある檀家から、こう言われた。

「住職の代わりはいても、お寺の代わりはない」

それでも現実は厳しかった。

「葬儀は共同体では寺の役目だから、葬儀料はわずかで戒名料もない。納骨堂や墓地もなかったので、墓地収入もない。お墓がないので、盆や彼岸に信徒がお寺に来ない」(中村さん)

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