日本人は欧州産チーズを真に楽しめていない

EPA合意で関税撤廃の一方、複雑な問題も

パルマ市内のスーパーをのぞくと、中央のエレベーター脇に巨大なパルミジャーノ・レッジャーノのタワーが(筆者撮影)

街中のスーパーに向かうと、店の中心に据えられていたのは、パルミジャーノ・レッジャーノの巨大なタワー。地下1階から1階まで、数え切れないほどのパルミジャーノ・レッジャーノが見上げるほどに高く積まれ、オブジェと化している。この街がいかに、パルミジャーノを愛し、発祥の地としての誇りを持っているかがうかがえる。

山のように盛られたパルミジャーノ。よく見るとシールには原産地名称を保証する"DOP"の文字が(筆者撮影)

伝統的製法で製造することが規定されている欧州

そのパルミジャーノ・レッジャーノに貼られたシールをよく見ると、「DOP」の文字がある。これは、伝統や地域に根ざした特有の食品などの品質認証のためにEUの法律が規定した制度による認証マーク。ヨーロッパでは、食に対する法律の整備が古くから進んでおり、限定産地の材料を使用し、その土地の気候や土壌の性質を生かした製法で生産・加工することが厳格に義務づけられている。

1つ38キロにも及ぶパルミジャーノ・レッジャーノは、数世紀も昔から受け継がれる伝統的製法で製造することが規定されており、約600L以上もの生乳をじっくりと最低12カ月以上熟成することが特徴だ。そのうえで、専門家がハンマーでたたくなどして、質感や香りなどを厳しくチェックしたのち、品質を認められたものにのみ、パルミジャーノ・レッジャーノの焼印がめでたく押されることになる。

見た目はほぼ同じパルミジャーノでも、ヨーロッパでは、その産地や製法の違いにより厳格に、「グラナパダーノ」や「スプリンツ」など異なる名称で分けられる。

そのため、伝統的製法を受け継ぎ、最高峰の品質を守り続けているパルミジャーノ・レッジャーノを作る職人たちは、熟成期間も製法も簡素化されたより安価なチーズが「パルメザン」として出回っていることを嘆いている。

EU域内ではこれまで、パルミジャーノ・レッジャーノをめぐり幾つかの訴訟が起こったが、欧州司法裁判所は、「パルミジャーノ・レッジャーノ」を使っていないチーズは「パルメザン」を名乗れないと認定している。しかし、一歩EU域外に出れば、事情は異なる。たとえば、アメリカでは、パルミジャーノ・レッジャーノより熟成期間も短く安価に作られたチーズが「パルメザン」として一般に流通し、それを粉末状にした粉チーズは大人気の商品だ。

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