原油相場がジワリ上昇している2つの理由 OPEC等供給側だけを見ていてはわからない

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また、サウジアラビアのハリド・ファリハ・エネルギー相が、サウジの8月の原油輸出が日量660万バレルと、前年を約100万バレル下回る水準に減少するとの見通しを示したことも大きなインパクトがあった。さらに同エネルギー相は、「OPECおよび非OPEC加盟国は、必要であれば協調減産の期限を2018年3月から延長することを支持する」と表明した。これも極めて大きな意味を持つ発言であったといえる。

また、減産を終了する際には市場に衝撃を与えないよう、円滑な減産解除を目指す方針も示している。世界の原油在庫は、減産により9000万バレル減少したものの、先進国では5年平均をなお約2億5000万バレル上回っている。

一部のOPEC加盟国の減産合意の順守が十分でないことや、OPEC全体としての輸出が増加したことが需給改善を遅らせ、原油価格の下落につながっている。そのため、監視委員会は順守が十分でない国と協議を行い、「順守率の引き上げの確約を得た」としており、今後は厳格な減産枠以下の生産の順守を求めることになる。順守率がさらに高まれば、供給が減少することで、原油在庫の調整は確実に進むことになろう。

シェール増産観測が緩和される可能性も

一方、後者の米国のシェールオイルに関しては、ややネガティブな見通しが示されている。

米大手石油サービス会社のハリバートンは、米国の石油掘削リグ(掘削機)稼働数が年内は1000基を上回るものの、中期的には約800から900基が持続可能な水準との見通しを示し、リグ稼働数に頭打ちの兆候が見られるとしている。この発言は、シェールオイル掘削ブームの後退を示している可能性がある。これまで強気一辺倒だったシェールオイルの増産観測が緩和される可能性が高まっていることは、これまでの見方を一変させるものであり、要注意といえるだろう。

世界の石油需要は、2018年には前年比で日量140万~160万バレル増加するとの見通しである。JMMCの議長国であるクウェートは、市場で再均衡化の動きが見られない場合、減産合意を2018年3月以降も延期する可能性を検討するとしている。

このような見解は、これまで原油相場の下値を売ってきた投機筋の追加的な売りを躊躇させるのに十分な材料だろう。

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