キヤノン御手洗会長、カメラビジネスに強気 御手洗冨士夫キヤノン会長兼社長に聞く
[東京 23日 ロイター] - キヤノン<7751.T>の御手洗冨士夫会長兼社長は、ロイターとのインタビューで、一眼レフカメラは今後も持続的な成長が期待できるとし、カメラ事業は全く悲観していないとの見解を示した。
足元では、スマートフォン(スマホ)に押されるコンパクトカメラが縮小し、一眼レフも落ち込んでいるが、かつてフィルムカメラが成熟期に入っても年3―5%の成長があったとし、今後もデジタル一眼レフは年率数%の伸びが見込めるとの見通しを示した。
キヤノンは第2四半期決算発表で、2013年12月期のデジタルカメラ販売を下方修正。コンパクトカメラは前年比23%減の1400万台と減少幅を大きくしたが、レンズ交換式カメラは下方修正しながらも、前年比9%増の900万台と販売増の計画を維持した。
調査会社の米IDCによると、2013年のデジカメ出荷見通しは、コンパクトが前年比40.2%減で、一眼レフカメラも同11.3%の減少予想と、先行き懸念が広がっている。ニコン<7731.T>も4―6月期決算でデジカメの販売台数を下方修正し、レンズ交換式カメラを前年比6%減の655万台に引き下げている。
御手洗会長の今回のインタビューでは、カメラビジネスに対する強気の姿勢が目立っていたほか、監視カメラの需要拡大に強い期待感を持っていることが特徴的だった。
インタビューの詳細は以下のとおり。
――年間のカメラ販売計画を下方修正した。2ケタ成長を続けてきた一眼レフの販売が減速しているが、市場環境はどう変化しているか。
「1―6月期では一眼レフは欧州と中国で落ち込んだが、これは経済情勢が回復すれば戻ってくるのがはっきりしている。コンパクトが落ちている分だけ損益は落ちているが、私はカメラビジネスについて全く悲観していない」
「コンパクトも一眼レフも共通して落ちている理由は、アナログカメラからデジタルカメラへの買い替え需要が減ってきているためだ。買い替え需要は過去10年にわたって続いて、それによって2ケタ成長もあったが、最近はそれがだいぶ消化されてきた」
「しかし、買い替え需要は『ゲタ(底上げ)』に過ぎない。これが減っても、一眼レフを持っている人はお金持ちなので、まだ売れる。アナログカメラは成熟期になっても3―5%の成長があったが、それが正常な姿だ。だから、これからも一眼レフは数%ずつずっと伸びていく」
――期待を集めたミラーレスの販売も伸びていないようだ。
「うちは市場の穴を埋めるために作っているが、やはりキヤノンは一眼レフが本命だ。ミラーレスより一眼レフの入門機をたくさん作って、プロから入門機まで充実させていく。ただ、ミラーレスはやめない。(今はまだ1機種だが)、これから2―3機種を出していく計画だ」
――コンパクトの落ち込みが激しい。
「スマホに押されているのは事実。うちのコンパクトの販売台数は最盛期の半分(1400万台)になってしまったが、まだまだ1―2割落ちると思う。ただ、年間1000万台を割ることはなく、その前に下げ止まるだろう。うちのコンパクトカメラは50倍ズームで土星の輪が撮れる機種もある。それはスマホでは絶対にできない領域で、しかもコンパクトは一眼レフより安い。この需要が崩れることはない。また、すでにWiFiを組み込んだコンパクトカメラの写真をスマホで友人に送るといった使われ方が広がっている。もうスマホとは仲良くなっているし、共生できる。スマホが完全にカメラを排除することはない」
――デジカメを中心とする「イメージングシステム事業」の売上高は約1.5兆円あるが、この規模は維持していくか。
「維持するどころかもっと伸ばしていく。この事業には、昨年1月から参入した映画用カメラ事業があるし、今後は監視カメラが増えていく。特に監視カメラは、今年1月からデジタルカメラの事業部から独立して、専門部門を立ち上げたばかり。監視カメラは数兆円の市場規模があり、2016年以降に1000億円の事業に育てたい」