東大推薦で全国1位、県立広島のスゴい育て方 創立まだ13年、独自の思考・表現力を鍛える

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推薦入試で合格者を多く出した理由について、広島中・高進路指導部の森嘉治氏は「論理的に考える力や面白い視点を見つける力が磨かれたのではないか」と分析する。中学では同校独自の「ことば科」の授業が行われる。写真を見てそれが何を表現しているのか読み解いたり、ディベート(討論)を行ったりすることを通じて、論理的な思考力や表現力を身につけるのが目的だ。高校では各自が課題研究を行い、論文を作成する。

創立わずか13年で急速に躍進を遂げた広島県立広島中学・高校(撮影:富田 頌子)

推薦入試だけではなく、大学の一般入試でも実績を残している。実は広島高校では有名大学への進学実績の目標数を明確にしている。

世界レベルの研究を行っているスーパーグローバル大学(SGU)のトップ型に指定された国立大学11校(北海道大、東北大、筑波大、東京大、東京医科歯科大、東京工業大、名古屋大、京都大、大阪大、広島大、九州大)と一橋大、神戸大、それ以外の国公立大学の医学部の合計で、2018年度までに110人の現役合格を目指している。今年は80人が現役で合格。来年度の目標は95人と段階的に増やしていく計画だ。「広島の県立高校では地元の国立である広島大に行けたらすごいという感覚がある。その中で目指す水準は高い」(小笠原氏)という。

目標を明確にする理由について森氏は、「目標を掲げないと現状維持になる。学校も生徒も高い目標に向かっていくことが大切だ。ただしそのために志望校を変えさせることはしていない」と説明。高いレベルを目指すことで進路にさまざまな可能性を広げていくことも目的にしている。

全校生徒の約1割が寮で共同生活

また、広島県全域から生徒が通えるよう学校の敷地内には寮も併設されており、中学1年生から高校3年生まで全校生徒の約1割にあたる134人が共同生活をする。夜は学年により異なるが、3時間程度の勉強時間があり広島大学の学生に質問することができる。

今年の東大合格者4人全員が寮生だった。「学校の授業をしっかりやって結果を残せるということを示すことができたのではないか」(森氏)と自信を見せる。高校入学時などには短期入寮を行い、勉強方法を学び自習の習慣や規則正しい生活習慣を身につける取り組みもしている。

創立から13年という短い期間ですでに高い進学実績を残しているといえるが、さらなる飛躍へ意欲を見せている。まずは、2018年度の合格実績を達成することが直近の必達課題となりそうだ。

富田 頌子 東洋経済 記者

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とみた しょうこ / Shoko Tomita

銀行を経て2014年東洋経済新報社入社。電機・家電量販店業界の担当記者や『週刊東洋経済』編集部を経験した後、「東洋経済オンライン」編集部へ。

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