自動車企業がITベンチャーへ投資する理由 米シリコンバレーの新興企業への出資を強化
[デトロイト 20日 ロイター] - ゼネラル・モーターズ(GM)
GMは2010年にベンチャーキャピタルを立ち上げた。新素材や代替燃料など様々な分野へ出資するだけでなく、出資企業の最初の顧客になることを視野にいれている。
一方、フォードは、衛星ラジオのシリウスやIT関連企業に出資していたベンチャーキャピタル部門を10年前に閉鎖。現在は他社との提携に重きを置くことで「消費者にとり次世代の車体験」を提供するため、技術導入に注力している。
同社にはベンチャーキャピタル事業はないが、ビル・フォード会長はフォンティナリス・パートナーズ(Fontinalis Partners)というベンチャーキャピタル企業を保有している。フォンティナリスは、フォードの元幹部、マーク・シュルツ氏が運営し「将来の輸送技術」への投資に注力しているという。
フォードはフォンティナリスと適度な距離感をもった関係を維持するとし、企業ベンチャーファンドを復活させることはないとしている。
自動セクターのIT技術導入としては、スマートフォン(多機能携帯電話)など通信機能やアプリを自動車に加える「コネクテッド・カー」が一例だ。また、新製品のデザインや開発のサイクルが通常5年ほどの自動車業界は、消費者のし好や先端技術は数カ月単位でめまぐるしく変化するということを認識しつつある。
4年前のGM破たんとフォードの業績悪化に加え、電気自動車メーカー、テスラ
GMのスティーブ・ガースキー副会長は、GMベンチャーズの創設は、4つの壁に囲まれたデトロイトの外に出て、他の地域や国から良いアイデアを得ることで、研究開発部門をアウトソースするようなもの、と指摘する。
GMのベンチャーキャピタルは、太陽光発電のサンロジックスや次世代電池のSakti3など、これまで20近くのスタートアップに出資している。
GMベンチャーズの最高技術責任者兼プレジデントのジョン・ラウクナー氏は「通常(GM車に)導入可能な技術に投資している」とし、投資ファンドは開設から3年しかたっていないため、これまで投資した技術が製品に活用されるかどうかに言及するのは時期尚早とした。
ただ、ワイヤレス充電技術のパワーマットは、2014年からスマートフォン用ワイヤレス充電器をGM車に搭載する。
フォードはここ数年、技術提携についてより慎重になっている。これには同社がマイクロソフトと共同開発し2007年に発表した車載テレマティクスシステム「SYNC」の技術的問題が明らかになったことが背景にある。2012年初めにはパルアルトに小規模な研究拠点を開設した。
同社はモバイル端末やネット接続、車関連のアプリなどの分野でシリコンバレーの新興企業との提携を進めている。
フォードの研究開発部門は、シフトチェンジのタイミングを振動で知らせてくれるシフトレバー、ハプティック(haptic)を開発した。これは、マイクロソフトのXbox360ゲームコントローラーのモーターが使われている。
自動車業界は、テスラのような新興企業が自動車業界に長年続いたビジネスモデルを大きく変える可能性に関心を示している。
フォードのポール・マスカレナス最高技術責任者(CTO)は「テスラは業界のこれまでの考え方に、前向きな方法で挑戦した」と評価した。
GMのガースキー氏は、テスラや業界外の企業が自動車セクターに与える影響について「私はそれほど自我が強いわけではない。自動車の販売が伸び、収益向上につながるような良いアイデアならば、誰からでも受け入れるつもりだ」と答えた。
(Paul Lienert記者;翻訳 伊藤恭子;編集 宮崎亜巳)
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