民意を無視した、消費増税の議論 景気・経済観測(日本)
注目されていた2013年4~6月期のGDP1次速報が発表された。これを受けて、2014年4月に予定されている消費税率引き上げをめぐる議論が、本格化している。安倍晋三首相は足元の景気動向に加え、増税による景気や物価への影響について、増税の開始時期や税率の引き上げ幅を変える複数案を検証したうえで、今秋に最終判断するとしている。
しかし、議論の中身の前に違和感を覚えるのは、なぜ、今頃になって消費増税について本格的な議論を始めるのかということである。
足元の景気動向は、増税先送りの材料にはならない
政府は、4~6月期のGDP速報をはじめとした経済指標を見極めたうえで、消費税率引き上げについて最終判断すると繰り返してきた。8月12日に公表されたGDP速報の結果をあらためて確認しておくと、実質GDP成長率は前期比年率2.6%であった。
年率3%台半ばという事前の市場予想は下回ったものの、1%以下とされる潜在成長率を1~3月期(前期比年率3.8%成長)に続き大きく上回った。内容的にも2四半期続けて内外需そろった成長となっており、景気が順調に回復していると判断するのに十分なものだ。
もちろん、景気が今好調だからといって増税が実施される来春までそれが続く保証はない。もともと経済指標の実績値から先行きの増税を判断することにはおのずと限界があり、それは初めからわかっていたことだ。4~6月期の成長率が年率4%を超えなかったから、増税を先送りすべきという意見も一部にあるが、増税1年前の成長率が高ければ高いほど増税後に景気が失速するリスクが低くなるというものでもない。
増税を先送りすべきといえるのは、足元の経済指標が景気悪化を示すものであった場合だろう。現時点で景気が後退局面に陥っていれば、来春まで景気低迷が続く可能性があることや、景気が底を打ったとしても回復力が脆弱である可能性が高いことを勘案し、そのタイミングでの増税は見送るという判断はありうる。
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