民意を無視した、消費増税の議論 景気・経済観測(日本)

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もちろん、現在の政権与党である自民党は当時、野党だったという事情はあった。しかし、そうだとしても昨年12月の衆議院選挙、遅くとも今年7月の参議院選挙の前にきっちりと議論をし、自民党としての案を国民に提示することはできたはずだ。人気予備校講師の決めせりふ「今でしょ」は今年の流行語大賞の有力候補だが、消費増税の本格議論は今ではなく、もっと早い時期に行うべきであった。

選挙で示された民意を無視

2013年5月の新設住宅着工戸数が4年7カ月ぶりに100万戸(季調済み・年率換算値)を上回るなど、すでに来年4月からの増税を見越して住宅の購入を進めている家計も少なくない。仮にこれで増税が先送り、あるいは増税幅が縮小される一方で、住宅ローン減税の拡大や住宅購入者向け給付制度が実施されたとしたら、前倒しで住宅を購入したことは完全に裏目に出ることになる。

振り返ってみれば、任期中には増税をしないと言って政権交代を果たした民主党が消費増税法を成立させ、それに賛成した自民党が今度は選挙が終わったとたん、増税の先送り、税率の引き上げ幅縮小などの議論を始める。消費増税をめぐる問題について、国民の意思はいったいどこに反映されているのだろうか。

議論の中身もさることながら、これだけ重要な問題について国民に判断する機会を与えることなく議論が進められていることのほうが、より深刻な問題のように思われる。
 

斎藤 太郎 ニッセイ基礎研究所 経済調査部長

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さいとう たろう / Taro Saito

1992年京都大学教育学部卒、日本生命保険相互会社入社、96年からニッセイ基礎研究所、2019年より現職、専門は日本経済予測。日本経済研究センターが実施している「ESPフォーキャスト調査」では2020年を含め過去8回、予測的中率の高い優秀フォーキャスターに選ばれている。また、特に労働市場の分析には力を入れており、定評がある。

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