ある奴隷少女の手記から考えさせられること

1861年発行の書籍が再び注目を集めたワケ

いま、自分がおりの中に囚われていないと、誰が言い切れるだろう(写真:yacobchuk / PIXTA)

新潮文庫のラインナップに、新たな古典名作が加わった。しかし、『小公女』や『若草物語』のようなフィクションではない。著者自身が序文で「読者よ、わたしが語るこの物語は小説ではない」と言明している通り、「ある奴隷少女」本人が奴隷制の現実をつづった世にも稀なる手記なのである。アメリカでは、すでに大ベストセラーになっているが、日本でも長く読み継がれる本になるに違いない。

白人著者によるフィクションとみなされていた過去

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内容に入る前に、本書『ある奴隷少女に起こった出来事』がたどった数奇な運命についてふれたい。本書が刊行されたのは、1861年である。作中人物が存命だったため、「リンダ・ブレント」というペンネームで執筆され、一般的には、白人著者によるフィクションとみなされて読まれた。奴隷解放運動の集会などで細々と売られたが、次第に忘れ去られ、関係者の死とともに著者・ジェイコブズとのつながりも分からなくなっていった。

転機が訪れたのは、出版から126年を経た1987年。歴史学者がジェイコブズ直筆の手紙を発見し、本書がフィクションではなくリンダ(=ジェイコブズ)の手記であることが証明されたのである。その後、アメリカでじわじわと売行きを伸ばし、ベストセラーになった。それを偶然目にした堀越ゆき氏の翻訳により、150年の時を経て、ようやく私たち日本人のもとに届いたのである。

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